情報端末などの技術開発を手掛けるユビテックは7月8日、スマートウォッチで業務現場の熱中症や転倒・転落などを予防するクラウドサービス「Work Mate」において、8月1日から有人によるリモート監視で作業者の異常を管理者にアラートする新機能を提供すると発表した。
同社は、電子機器メーカーとして1977年に創業し、現在はオリックスのグループ企業として法人向けサービスに注力している。会見した代表取締役社長の大内雅雄氏は、2025年6月期を目標年次とする中期経営計画において、デバイスと人工知能(AI)やデータの活用を通じて業務現場の改善や課題解決に貢献するデジタルサービスに注力していると説明した。
ユビテック 代表取締役社長の大内雅雄氏
その取り組みでは、プロドライバーの安全運転を支援する「D-DRIVE」や製品の不良改善を支援する「D-COLLECT」などを提供。今回機能を強化するWork Mateは、製造や建設などの現場担当者が装着するスマートウォッチとアプリを通じてバイタルデータを収集・分析し、現場環境などのデータと組み合わせて、現場担当者の安全を支援する。
Work Mateを利用することで、熱中症や転倒・転落などの万一の際に迅速な対応を取れるようにする。また、平時のデータを基に現場担当者の体調をリアルタイムにチェックして異常発生の危険性を予測する。その恐れのある現場担当者へ事前に休憩を促すなど事故を未然に防ぐ。
大内氏によると、Work Mateは約5年をかけて開発と実証を行い、2019年にサービスを開始。現在は製造業や建設業など約60社が導入しているという。特に近年は、コロナ禍の影響で、現場業務も感染対策として密集などを避けるべく1人で作業を行うケースが増加。現場で管理者による見守りが難しくなり、体調不良などによる事故の発生リスクが高まっているという。担当者が自身の体調変化に気付きにくかったり、気付いても申告しづらかったりといった課題もあるとしている。
Work Mateでは、スマートウォッチの画面に作業者の心拍数や歩数、消費カロリーなどの体調情報を表示するほか、体調変化で事故の危険性が高まった場合には音とバイブレーションでアラートを通知し、休憩などのアドバイスを行う。現場で異常を発見した場合は、その場でスマートウォッチから管理者に報告も行うことができる。管理者は、管理画面で現場担当者の所在や体調などをリアルタイムに確認でき、収集した各種データの分析から個々人の作業負担の状態を把握して、事故を未然に防ぐアクションが取れる。
Work Mateでの熱中症対策実績。2021年は228件のアラートがあり、休憩や作業ペースを落とすことを促して熱中症の事故をゼロ件にしたという
大内氏によると、例えば作業現場の熱中症対策を検討する場合、従来は公表されている熱中症指数などを参考に検討するしかなく、現場環境や担当者に応じた対応ができなかった。このためWork Mateは、現場の配置図データや温度情報なども取り入れ、担当者ごとの情報もAIで継続的に分析することで、きめ細かい対策を講じられるようにしたという。
今回発表した新機能は、ユビテックの担当者が平日午前10時から午後6時の間に、全国各地の現場の異常発生をリモートで監視する。現場で異常が起きた際の1次アラートについて管理者がすぐに対応できないなどの場合に、ユビテックが状況の把握や顧客の連絡先に2次アラートを行い、異常時の対応をサポートする。
新機能として同社がリモートで全国の現場の安全監視をサポートする
Work Mateの今後について大内氏は、疲労蓄積や眠気、注意力の低下など危険につながる兆候を把握するさまざまなアルゴリズムの開発と検知精度の向上を図るほか、D-DRIVEと連携した輸送現場業務の安全支援、リモートワークを行う従業員の遠隔での健康管理といった機能開発を推進していくと説明した。