本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Box CEOのAaron Levie氏と、IIJ ヘルスケア事業推進部長の喜多剛志氏の発言を紹介する。
「未来の働き方は3つのメガトレンドがけん引する」
(米Box CEOのAaron Levie氏)
米Box CEOのAaron Levie氏
米Boxの日本法人Box Japanは先頃、年次イベント「BoxWorks Digital Tokyo 2022」をオンラインで開催した。オープニングキーノートには、Boxの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏がリモートで登壇。スピーチの中で「未来の働き方」について見解を示した。
Levie氏はまず、「働き方」の変化について、次のように述べた。
「私たちは今、『デジタルファースト』という働き方の新時代を迎えている。デジタルであることは、もはや選択肢の一つではない。競争力を得るための手段でもない。21世紀のビジネスに欠かせない要件だ」
同氏は「デジタルファースト」という言葉を使ったが、今やバズワードとなっている「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の核心を端的に説明したものといえる。
同氏は、さらに次のように話を続けた。
「パンデミック(感染症の世界的大流行)の状況下では、かつてのように人と直接会うことが当然ではなくなった。意思決定のための会議や顧客との契約に関する打ち合わせなど、部門を越え、異なる拠点から人が集まってのコラボレーションが困難になっている。そうした中で、今、迎えつつあるデジタルファーストの時代では、働く場所にかかわらず、常にデジタルプラットフォームにつながり、クラウドに集約される。顧客との間の電子サインのやりとりや世界をまたぐオンラインミーティング、リモートワークか出社勤務かを問わない柔軟性など、働き方が根本的に変化している」
その上で、「未来の働き方は3つのメガトレンドがけん引する」として、その内容を次のように説明した(図1)。
図1:未来の働き方をけん引する3つのメガトレンド(出典:「BoxWorks Digital Tokyo 2022」オープニングキーノートでの説明資料)
「第一に、どこからでも仕事ができること。かつて重要な仕事をするには、午前9時から午後5時までオフィスにいる必要があった。同僚とのブレーンストーミングや意思決定は、全てオフィスで行われていた。それが突然変化し、ハイブリッドな働き方が主流となりつつある。デバイスを選ばず、いつでも仕事ができて、世界中の同僚とコラボできる環境をクラウドに集約することで、より効率的でモダンなコラボが可能になる」
「第二に、デジタルファースト。顧客やパートナーを含む社内外とのやりとり、新入社員のオンボーディング、サプライチェーンの効率化、グローバル規模での製造活動は、今や完全にデジタル化されている。企業の成長の必須要件ともいえるだろう」
「第三に、セキュリティ。デジタルとリモートワークが当たり前となった今、サイバーセキュリティの重要性がこれまで以上に高まっている。重要な知財を保護しなければならない。知財は事業を通して活用され、共有される。厳しさを増すグローバルコンプライアンス、データプライバシー要件を確実に満たさなければならない」
そして、こう強調した。
「未来の働き方をけん引する3つのメガトレンドの核心は、コンテンツの活用にある。働き方の変革や業務のデジタル化において、コンテンツはこれまで以上に重要になっていく」
Boxは、2022年5月6日掲載の本連載記事「『コンテンツクラウド』を前面に押し出したBox CEOの思惑とは」で解説したように、「コンテンツクラウド」を標榜している。その意味では、「いよいよBoxの時代が来た」と宣言したようなLevie氏の野望も垣間見えたスピーチだった。