2023年に向けたIT企業のトップメッセージを紹介する。
日本オラクル 取締役 執行役 社長 三澤智光氏
新型コロナウイルスによる公衆衛生上の危機、国際情勢の悪化によるサプライチェーンの混乱、サイバー攻撃の急増、原油・資源高、物価上昇などに伴い、景気には依然先行きの見えない不透明感が漂っています。また、政府・地方公共団体や企業、従業員、サプライヤー、パートナーには、デジタルを通じた相互連携の必要性も求められ始めました。これら目まぐるしく変わる経営環境の中で事業継続リスクを最小化し、変化に対する素早い対応を行うためには、必要なテクノロジーへの投資と大胆な意思決定・行動が最善の道となります。
特に少子高齢化に伴う労働生産人口の減少が顕著な日本では間接業務の省人化が重要であり、付加価値の高い業務に人的資源を集中させることが肝要です。しかし日本の名目GDP(国内総生産)とIT投資の推移を見ると、過去20年に渡って名目GDPにもIT投資にもほとんど成長は見られず、大半が既存システムの運用・保守に費やされ、新たな施策展開のための予算が割り振られていません。
今、日本の企業・団体が直面する喫緊の課題として、ITコスト構造の変革とデジタル化による企業競争力の強化が求められます。さらに、昨今の社会・経営環境の劇的な変化を鑑みると、これまでとは比較にならないスピード感を持ってこれらのトランスフォーションを進めなければなりません。
日本オラクルは、トランスフォーメーション実現に向けて、複数の独自施策を展開しています。コスト構造の変革、事業継続リスクの最小化と変化対応力向上に向けたソリューションとして、全てのワークロードを安全かつ安定して高速処理する「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」を提供し、ミッションクリティカルシステムの近代化を支援します。2022年も、システムの更改コストの低減、運用の自動化による大幅なコスト削減、高いセキュリティ機能などを評価いただき、金融、製造、情報通信、サービスなど、業界を代表する多くの企業がOCIへの移行を果たしています。
また、機密データ管理に関する規制やデータへのアクセス要件などの要因から、クラウド導入に柔軟性を求めるお客さまの声が高まっています。多様なニーズと需要の高まりに迅速に対応するため、パブリッククラウドのOCIに加え、「OCI Dedicated Region」や、「Oracle Exadata Cloud@Customer」など、お客さまがどこからでもクラウドサービスにアクセスできる分散クラウドソリューションを強化しています。さらには、複数のクラウド間で適切なサービスを選択し、コスト削減や変化対応力を強化できるように、マルチクラウドソリューションの提供も継続的に拡充しています。「Microsoft Azure」サービスとOCI上の「Oracle Database」サービスの高パフォーマンス、高可用性および自動管理を組み合わせた「Oracle Database Service for Azure」の発表も2022のハイライトの1つとなりました。
2022年10月には対面では3年ぶりの開催となった米国ラスベガスでの「Oracle CloudWorld 2022」では、このクラウド導入の柔軟性をさらに推進すべく数々の大きな発表が行われました。お客さま、パートナー企業がOCIを用いて独自のクラウドサービスを展開できるようにする「Oracle Alloy」がその1つです。このサービスは、自社データセンターを運用し大規模な顧客システムを構築・運用管理しているシステムインテグレーターの強い味方となり、データ主権を守りたいと考えるお客さまが多い日本でこそ優位性を発揮するものと考えます。
一方で、より複雑化する課題の迅速な解決とデータからの価値創出のために人工知能(AI)を活用したいというニーズもより一層高まっています。オラクルとNVIDIAは、AI活用によるお客さまのビジネスの課題解決をより迅速に支援するため、長年の協業関係を拡大し複数年に及ぶパートナーシップを締結しました。これにより、GPUからシステム、ソフトウェアに至るまで、NVIDIAアクセラレーテッドコンピューティング全域をOCI上で利用できるようになり、両社の専門知識を提供することで、さまざまな業界のお客さまが直面する多くの課題を克服できるよう支援します。
クラウドアプリケーション群「Oracle Cloud Applications」は、ビジネスプロセス全体のデジタル化に対するソリューションを引き続き提供します。プロセス全体の標準化とデジタル化を図ることで生み出された経営資源を元に、企業競争力を強化する、付加価値の高い業務に集中できるよう支援します。また、SaaSサービスとして提供することで、インフラのリソース調達からの解放のみならず、アドオンの更改や更新コストの撤廃などによる導入の短期化とコスト削減を実現し、継続的なアップデートによってあらゆるビジネス変化にも迅速に対応します。2022年にも、日本を代表する数多くの企業に「Oracle Cloud ERP」をはじめとする「Oracle Cloud Applications」を採用いただきました。
また、2023年会計年度の重点施策の一つとして、安全、安心で豊かな暮らしを支える社会公共基盤の実現を掲げています。2022年にOCIがガバメントクラウドの対象サービスに選定されました。OCIが備える高度なセキュリティ、可用性およびパフォーマンスを日本の政府機関・地方公共団体に提供し、シームレスで革新的な行政サービスの推進を支援していきます。
そのような取り組みの1つとして日本オラクルは、北海道大学、富良野市と協働し、産官学一体となった「北海道富良野市のスマートシティ推進支援」プロジェクトを2021年から行っています。2022年10月には、三者合同で「北海道富良野市のスマートシティ推進に関する産官学連携にかかる協定」を新たに締結しました。Society 5.0時代のあるべき姿を念頭に置き、今後3年間をかけて官民データ活用を通じた協働の取り組みを推進しながら、あらゆる人が安心して暮らせる社会の実現を目指します。
持続可能な社会実現のためのESG(環境・社会・企業統治)やサステナビリティーの取り組みも重要な経営課題です。自社においてもサステナビリティーを重視しており、2050年のネットゼロ達成に向け、まずは2025年までにオラクルの施設・クラウドの両方を含めたグローバルオペレーションを100%再生可能エネルギーで賄うための取り組みを推進しています。持続可能な未来の実現に向け、オラクルは今後も積極的に持続可能な社会の実現に取り組みます。
働き方においても、オラクルは多様性に最大限の敬意を払い、そして歓迎しています。イノベーションを創出し未来を切り拓いていくためには、多様な背景や視点、能力を持った人々が必要だと信じているからです。今後も全ての人々が最高の環境で仕事を行えるように、そして社会のモデルとなってもらえるように、オラクルはダイバーシティー&インクルージョンの取り組みを率先していきます。
日本においても、人的資本情報を含む非財務情報の開示、温暖化ガス排出削減など、持続的な成長を実現するためのサステナビリティー経営の推進が求められています。お客さまの中期的な企業価値向上と循環型経済の実現に向け、サステナビリティー経営をITの側面から支援します。
最後に、課題がより複雑化する昨今の環境の中で、変化のスピードに追従しながら、日本が直面するコスト構造とデジタル化による業務の変革に取り組んでいくためには、パートナーさまとの協業やエコシステムが欠かせません。ミッションクリティカルシステムの近代化に向けて既に広がりを見せる各パートナーさまとの協業・連携強化に加え、上記に列挙してきた取り組みを推進し、お客さま、パートナーさま、社会、そしてオラクルの「四方よし」を目指します。
2023年も、広範かつ統合されたクラウドサービスと多くの新しいソリューションにより「TRUSTED TECHNOLOGY ADVISOR」としてお客さまの解くべき課題を迅速に解決し、持続的な成長を支援していきます。