NEC、2022年度第3四半期は増収増益--計画達成に巻き返しも

大河原克行

2023-01-31 06:30

 NECが1月30日に発表した2022年度第3四半期(2022年4~12月)の連結業績は、増収増益だった。上期の想定以上の落ち込みを第3四半期で巻き返した格好だ。累計の売上収益は前年同期比8.2%増の2兆2692億円、営業利益は同20.8%増の570億円、調整後営業利益は9.8%増の834億円、税引き前利益は17.4%増の576億円、当期純利益は5.8%増の263億円となった。通期業績見通しは据え置き、計画達成を目指す。

NEC 代表取締役 執行役員常務兼CFOの藤川修氏
NEC 代表取締役 執行役員常務兼CFOの藤川修氏

 説明を行った執行役員常務兼CFO(最高財務責任者)の藤川修氏は、「第3四半期累計で増収増益となり、計画に対してオントラックで来ている」と話した。上期時点で想定外の落ち込みにより厳しい見方をしていたが、その巻き返しにも手ごたえを感じているようだ。

 通期の業績見通しは、売上収益を前年比3.8%増の3兆1300億円、調整後営業利益を同8.2%増の1850億円、調整後当期純利益を同31.2%減の1150億円としており、「グローバル5Gにおける損益挽回などが必要で、依然としてリスクはある。だが、好調なITサービス領域などのアップサイドを取り込むことでカバーし、調整後営業利益1850億円の達成を目指す」と藤川氏は意気込む。

 2022年度の業績を左右しているのは、ネットワークサービス事業だ。上期に海外5Gビジネスにおいて戦略的受注案件として一過性の損失で55億円を計上。さらに国内キャリアの5G投資の遅れが原因となり予想よりも厳しい結果だった。第3四半期時点でも上期までのマイナス影響をカバーし切れず、第3四半期累計でのネットワークサービス事業の売上収益は前年同期比3.1%増の3610億円、調整後営業利益は164億円減の6億円の赤字となっている。

 だが第3四半期単体は、売上収益が13.5%増の1414億円、調整後営業利益が53億円増の127億円と、大きく改善している点が見逃せない。この回復ぶりには、幾つかの理由がある。

 一つは、グローバル5Gの海外売り上げが拡大し、増収要因となっていることだ。藤川氏によると、第3四半期時点のグローバル5Gの国内外比率は4対1で、第3四半期累計での7対1に比べると、海外比率が大きく高まった。「海外実績は、第3四半期だけで上期の2倍ぐらいに達している」(藤川氏)という伸びだ。

 また、先述したように、上期に海外案件で55億円の損失を計上したが、これが第3四半期には解消。上期は、既存の通信事業者に対して初期の量産ロットを戦略的価格で受注したことが影響したが、「これ以降は収益性を悪化させる案件を取らない形で進めている。現在技術革新を通じて競争力のある製品を開発しており、2023年度には新製品が投入できる。利益に貢献することになる」(藤川氏)とする。

ネットワークサービスビジネスの業績
ネットワークサービスビジネスの業績

 「グローバル5G市場の立ち上がりが2年ほど遅れているのではないか」との見方も出ているが、藤川氏は「中期経営計画では、海外5G事業が利益に貢献する部分がそれほど大きくはない。むしろ競争力のある製品を開発するための猶予期間と捉えることもできる」と前向きな姿勢を見せた。

 2つ目は、第3四半期に知財収益として100億円をネットワークサービス事業に計上したことだ。全社では知財収益として145億円を計上している。知財収益は、2021年度第4四半期に続くもので、今回は10年未満の複数年分を一括して計上したため、まとまった数字になっているとのこと。交渉を続けてきた成果がこのタイミングでプラス要素として計上された。

 NECは、ネットワークサービス事業に限定することなく、今後も知財戦略を継続する姿勢を見せている。藤川氏は「今後も保有する知財の収益化に注力し、利益水準の底上げを図る」と語る。

 だが、調整後営業利益では、第3四半期累計でも赤字から抜け出せていない点は依然として課題だ。前年同期と比較しても164億円減という状況である。ここでは、第3四半期に、在庫評価を含む資産クリーンアップによって、50億円の一過性費用を計上。さらに、5G事業の拡大に向けた戦略的費用の増加などが理由となっている。

 「コロナ禍で部品調達が遅れる中、半年以上長いタームで契約したものがあった。戦略的に在庫を積み上げるといった施策につながっているが、一部の製品は長期レンジの計画で調達、製造したため長期滞留になったものがあった。一部にはお客さまで製品の代替わりがあり、出荷できないものもあった。一部の部材は他に転用するなどしたが、残った部分は資産クリーンアップを行った」と藤川氏は説明する。

 このようにネットワークサービス事業を取り巻く環境は、変動要素が激しいが、藤川氏は、「グローバル5Gの調整後営業損益は第3四半期までに計上した一過性費用や、戦略的費用の増加といった悪化要因があり、年間予想の達成には不透明な部分がある」としながらも、「第4四半期偏重の国内向けグローバル5G事業が貢献すると見ており、挽回し、年間予想を達成する見込みだ」と発言。「第3四半期までに完了したかった国内案件を第4四半期に刈り取ることもできる。利益率の高い案件で、目標達成を諦めていない」と意気込んだ。NEC全体の通期業績達成においても、グローバル5G事業を中心としたネットワークサービス事業の行方が大きな影響を及ぼすことになる。

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