本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏と、日本IBM 執行役員 テクノロジー事業本部 クラウド・プラットフォーム担当の今野智宏氏の発言を紹介する。
「2025中期経営計画の達成に向けて2023年度からスパートをかける」
(NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏)
NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏
NECは先頃、森田氏の共同会見をオンラインで開いた。同氏の冒頭の発言はその会見で、2023年に向けたマネジメント面でのポイントを聞いた筆者の質問に答えたものである。
「今日は何でも聞いてください」
こうした共同会見は、社長が最初にビジネスやマネジメントについての近況などを少し話すケースが多いが、森田氏の場合、これまで四半期ごとの決算会見にも登壇して説明役を務めてきたこともあってか、今回はすぐに質疑応答へと入った。
参加した記者からはさまざまな切り口での質問があったが、ここでは筆者の質問に対する森田氏の回答を取り上げたい。
筆者の質問は、「2023年に向けて、ビジネス面とマネジメント面で最も改善したいと思っておられる点をそれぞれ一つ、聞かせていただきたい」というものだ。これに対し、森田氏は次のように答えた。
「マネジメント面では、2023年は現在推進している『2025中期経営計画』(5カ年計画)の真ん中(3年目)の年にあたる。これまでの2年間はホップ、ステップという段階を着実に踏んで来た。この2年間で感じているのは、中期経営計画の方向性、つまりNECのパーパス、戦略、文化や、技術と信頼性を中核にした成長モデルであるグローバルでのデジタルガバメントおよびデジタルファイナンスと5Gへの注力、国内においては自社、お客さま、社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくという大きな枠組みは正しく、その中で成長できるということだ。そうしたこれまでの経緯を踏まえ、組織や人の問題も含めて、2023~2025年度は実行と結果を出すことにスパートをかける。そのために体制をしっかりと固めてゴールに向かって進んでいきたい」
さらに、こう続けた。
「ビジネス面では、デジタルガバメントおよびデジタルファイナンス、5G、国内における自社、お客さま、社会のDXに向けて確実な進ちょくを示していけるようにしたい」
冒頭で紹介した発言は、マネジメント面でのコメントから抜粋したものである(表1)。
表1:NECの「2025中期経営計画」の目標(出典:NECの発表資料)
実は、筆者の質問には、森田氏の対応についてさまざまな角度から見る意図を込めて少しばかり仕掛けを施している。ビジネス面とマネジメント面を分けて聞いていることをはじめ、その順序、最も注力したい点ではなく「最も改善したい点」と聞いていることが、その仕掛けだ。
そうした観点で森田氏の回答を見ると、まず印象的だったのはマネジメント面から先に話したことだ。やはり「2025中期経営計画」のことが同氏の脳裏を一番占めているのだろう。また、ビジネス面とマネジメント面を分けて聞いたが、回答は同じような内容だった。同氏の頭の中ではマネジメントの中にビジネスが位置付けられているのだろう。
そして、最も改善したい点という問いかけ方をしたのは、経営トップがどんな点に危機感を抱いているのかを探るためだ。この点については、中期経営計画そのものに常に危機感というか緊張感をもって臨んでいる森田氏の心情を筆者は感じた。
その意味では、大変興味深い質疑応答のやりとりだった。