APACの最大懸念は「インフレ」--CIOの重視事項から見える日本企業の現在

阿久津良和

2023-02-27 08:00

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズと日本AMDは2月22日、日本人151人を含むアジア12市場のIT・ビジネス意思決定者906人を対象にした調査の結果をまとめた「CIO Technology Playbook 2023」を発表した。IDCが調査した。

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長 Jon Robottom氏は、「(サーバー向けCPU)AMD EPYCとNeptune水冷技術で、消費電力を最大40%削減可能。多くの顧客はコスト削減と性能向上を実現できる」と両社の協業から得た自社製品群の活用を提案した。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長 Jon Robottom氏
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長 Jon Robottom氏

最大の懸念事項は「ハイパーインフレーション」

 CIO Technology Playbook 2023は、日本を含む12のアジア(インド、韓国、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、台湾、タイ、香港、マレーシア、フィリピン)市場でビジネスに取り組むIT・ビジネス意思決定者906人を対象にした調査。従業員数500~999人の企業は270社、1000~4999人の企業は381社、5000人以上の企業は255社を数える。その結果から見えてくるのは、日本企業とアジア各企業が抱える主要懸念事項と優先事項の違い。

 アジア太平洋地域(APAC)の企業は「ハイパーインフレーション」を最大の懸念事項に掲げているが、日本企業は「人的資源不足」「原材料費の高騰」「エネルギー価格の高騰」が上位に並ぶ。

 主要優先事項はAPAC企業と日本企業がともに「収益と利益の成長」が最上位(APAC企業は36%、日本企業は49%)。日本企業は「コスト最適化と低減」「従業員の生産性向上」が後に続く。Robottom氏も「人材不足が影響している。一定の共通項はあるものの、日本企業は独自の焦点を持たなければならない」と指摘した。

 日本企業はデジタルインフラの役割に大きく期待している。2020年の同調査では27%だった「デジタルインフラへの期待値」が43%に上昇。「デジタルインフラの管理とセキュリティの自動化」は44%、「マルウェアに対処できるサイバーレジリエンス」は42%が、積極的投資分野に掲げている。

日本AMD コマーシャル営業本部 日本担当本部長 Michael Lay氏
日本AMD コマーシャル営業本部 日本担当本部長 Michael Lay氏

 日本AMD コマーシャル営業本部 日本担当本部長 Michael Lay氏は「ハイブリッドワークフォースを実現するには自社のセキュリティ(対策)が重要」と強調しながら、日本企業が重視する要素を紹介した。

 一つめはパブリッククラウドからの回帰。高負荷処理をパブリッククラウドからプライベートクラウドやデータセンターに戻した企業の割合が40%におよんだ。Lay氏は「日本企業は他地域よりも(パブリッククラウドへの)移行が進んでおり、実際の動きは見えてこないが、一つのトレンドであることは確か」だと説明した。

 二つめはデジタルイノベーション向けエッジの採用。今後12カ月以内にエッジコンビューティングを使用もしくは使用する予定の企業は67%におよぶ。利用範囲も「自動化による製品品質管理と修復」(27%)、「セキュリティサービス向けの画像・映像分析」(27%)、「物流における資産追跡やジオフェンシングといった管理」(26%)をエッジコンピューティングの業務工程に活用する予定だ。

 Lay氏は「(個人的に)面白いのはセキュリティサービスへの利用。セキュリティ向上もさることながら、リテールチェーンへも活用して、ビジネスの優位性を高めるのが重要なポイント」であると強調した。

 三つめは人工知能(AI)の主流化。今後12カ月以内にAIを使用もしくは使用する予定の日本企業は74%で、利用範囲は「セキュリティ」(22%)、「IT運用」(19%)、「不正リスク管理」(18%)が並ぶ。レノボのRobottom氏は「ポジティブな結果だが、個人的には物足りない」と苦言を呈しつつ、2位の「IT運用」は人的資源不足が影響していると分析した。

 四つめは“as a Service”の積極的な採用。事業運営に“as a Service”を使用または使用予定がある日本企業は63%と半数を超えた程度。理由としては「IT運用コストの削減」(25%)、「インフラリソースの最適化と活用」(21%)、「事業成果を推進するための技術革新に集中」(20%)が上位に並んだ。

 「例えば、米国企業は一度クラウドに移行しながらも、(業務スタイルに)合わないから(オンプレミスに)戻すケースもある。我々が支援すべきは、クラウドシフトすべきものとオンプレミス運用継続の見極め」(Robottom氏)

EPYCを搭載した製品群 EPYCを搭載した製品群
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 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズと日本AMDは戦略的提携を継続し、EPYCを搭載した製品を多数市場投入している。サーバーの「ThinkAgile」や「ThinkSystem」の各シリーズを企業や組織に提供しつつも、オンプレミスサーバーをクラウド風に利用できるIaaS「Lenovo TruScale」も提供中。Robottom氏は以下のように主張した。

 「日本の顧客はオンプレミスでも構わないが、as a Serviceの(従量課金モデルで利用できる)ファイナンシャルに魅力を感じている。ならば、オンプレミスサーバーを設置したまま、ビジネス的にクラウド必要なのかを弊社と日本AMDで提供できるのは一つの価値」

 インド工科大学ジョードプル校(IIT-Jodhpur)は老朽化したハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)をThinkSystemに置き換え、70TFLOPSの計算性能で約3000人の学生が「画像解析やAI、ML(機会学習)などヘビーなワークロードに活用」(Robottom氏)しているという。

インド工科大学ジョードプル校による導入事例 インド工科大学ジョードプル校による導入事例
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