Citizens Bankの顧客の口座から資金が誤って引き落とされたり、Wells Fargo銀行の顧客が振り込まれたはずの給与を受け取れなかったり、Southwest Airlinesの顧客が2度にわたってフライトを逃したりしたのはそう昔のことではない。いずれも顧客にとってはひどい体験であり、そのすべてがソフトウェアの不具合が原因で起きたものだった。しかし、より日常的で些細なことが、顧客体験を台無しにしてしまう場合もある。
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優れた顧客体験を提供することはどの企業にとっても最重要課題の1つだが、ITの専門家はその問題から取り残されてしまっている傾向にある。しかしGartnerが、今後数カ月から数年の間に、少なくとも半数の企業が「エンゲージメントチャネルの統一に失敗し、コンテキストを欠いた、バラバラでサイロ化された顧客体験を生み出してしまう」と予想していることを考えれば、技術者はその問題の矢面に立つ必要がある。
それはまさしく、ITの専門家が担うべき仕事だと言えるだろう。GartnerのアナリストであるIrina Guseva氏は、最近公表されたレポートで、「ほとんどの企業は、カスタマージャーニーのタッチポイントをまたいでシームレスなデジタル体験を提供することができずにいる」と述べている。
皮肉なのは、緊密な顧客エンゲージメントが強く求められているにもかかわらず、テクノロジーはそこから人間の関与を奪ってしまいがちだということだ。ユーザー体験管理ソフトウェアを手掛けるUserTestingの最高経営責任者(CEO)Andy MacMillan氏は、「テクノロジーが企業と顧客の距離を縮めていると言われているが、それが製品やサービスを対面で提供する機会を無くしてしまうことを意味する場合もある」と述べている。「技術者は、顧客体験の問題に関していくつかの課題に直面している。それは主に、技術者らが日常的に、あるいはまったく顧客と接していないからだ。そのため十分な知見を持っておらず、そのことが致命的な問題になる可能性がある」
そもそもITプロフェッショナルは、今もさまざまなバックエンドの仕事を数多く抱えている。それは、顧客体験の一部を形成する情報やサービスが複数の情報サイロに分かれており、フローを妨げている問題に対処することだ。Guseva氏のチームはさらに、「モノリシックな(巨大で単体の)技術は、体験の一貫性を損なう」と指摘している。同氏は、カスタマージャーニーの複数のタッチポイントに横断的に適用される、組織全体のデジタル体験戦略を立案して導入することを勧めている。それによって「総合的体験の原則を適用し、顧客体験(CX)、ユーザー体験(UX)、従業員体験(EX)、マルチ体験(MX)をリンクすることによってデジタル体験のギャップを埋める」ことができるという。Gartnerはこれを「コンポ―ザブルUX」と呼んでいる。(訳注:ここで言う「総合的体験(total experience)」は、Gartnerが定義した概念で、CX、UX、EX、MXの4つを繋ぎ合わせることによって得られる優れた共有体験のことを指している)