Slackは5月17日、自社イベント「Slack Sales Innovation 生産性を最大化し『勝ち抜く』営業組織へ」を都内ホテルで開催した。基調講演には、「バイトル」をはじめとする求人情報サービスなどを展開するディップで執行役員 商品開発本部長 兼 メディアプロデュース統括部長を務める進藤圭氏が登壇。ビジネスチャットツール「Slack」を起点とした3年間にわたる自社のDXの軌跡を語った。
進藤氏は「DXを難しく考えている事業者が多い」と指摘し、DXを推進するポイントとして「いきなりDXを目指さない」「なしくずしデジタル化しよう」「ITで会社の強みを伸ばすのがDX」の3つを挙げた。
いきなりDXを目指さない
ディップの65%は営業担当者であり、会社全体でITリテラシーが高いわけではないという。その中で同社は、アナログデータをデジタル化する「デジタイゼーション」、ビジネスプロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」、新しい価値を創出する「DX」と段階的に取り組みを進めた。
デジタイゼーションにおいて進藤氏は、日常的に使うツールから始めることを推奨。ディップでは、営業リストの作成や求人情報のサイト掲載など、複雑かつ長いフローで業務を行っている。同社はまず、「メール」「電話」「会議」に目をつけ、これらのデジタル化に着手。いろいろなITツールの起点として、Slackを導入した。
ディップ 執行役員 商品開発本部長 兼 メディアプロデュース統括部長の進藤圭氏
同氏は、複数のビジネスチャットツールの中からSlackを採用した理由について「社外のメンバーをゲストとして招待可能」「他システムとの連携がしやすい」などの点を挙げた。「どのツールにも一長一短があり、全ての企業にSlackが適しているとは限らない。自社のニーズや段階に合ったツールを選ぶことが大事である」と進藤氏。
だが、せっかく情報システム担当者がツールを導入しても、現場の従業員がなかなか使ってくれないことも想定される。そのため同社は、Slackの利用を習慣化させる仕組みを構築。これまで出勤時には、勤怠管理システムで打刻するとともに、メールで報告する必要があった。だがSlackの導入に当たり、API機能を活用してSlackで打刻すると勤怠管理システムにもデータが登録されるようにした。
また、情報システム部門と現場で熱量に差が生まれることを防ぐため、現場の従業員が「DXアンバサダー」としてツールの導入業務を兼任する体制を構築。これにより、現場の従業員を中心とした導入が実現したという。
その結果、導入後3カ月で全従業員の約8割がSlackを利用し、メールの数も激減した。当時実施したアンケートの結果を見ると、97%が「業務・コミュニケーションが効率化された」、88%が「自身の業務スピードがアップした」、79%が「業務上のアウトプットが増えた」と回答した。「お話しした通り、そこまで大層なことはやっていない。“カロリーがかからない”小さな成功体験を作ることから始めた」と進藤氏は説明した。