ネットワーク技術の展示会「Interop Tokyo 2023」が6月14日、千葉・幕張メッセで開幕した。1994年の初開催から30回目を迎え、NTTの「IOWN APN」を初出展するなど新たな高速通信時代の到来を告げる展示が特徴となる。リアルイベントの会期は16日まで。7月3~31日に実施するオンラインイベントと合わせて18万人の来場を見込んでいる。
ナノオプト・メディア 代表取締役社長 Interop Tokyo 2023 総合プロデューサーの大嶋康彰氏。30回記念のシールも作成
Interop Tokyoを主催するナノオプト・メディア 代表取締役社長 Interop Tokyo 2023 総合プロデューサーの大嶋康彰氏は、「コロナ禍の収束によりリアルイベントの出展数、来場数とも8割ほどにまで回復し、復活の傾向にある」と述べる。Interop Tokyoは、コロナ禍が始まった2020年こそ開催が中止されたが、2021年には復活。併催イベントを含めた今回の出展社数は475社(前回394社)、小間数は1334小間(前回1101小間)を数え、幕張メッセの展示スペースを1ホール拡張するなど、明らかに活気が戻っている。
今回のテーマは「To the next 30 years」。30回目の節目を迎えて大嶋氏は、「『次の30年を考える』をテーマに選んだ。この場に来て、見て感じていただけることが大切だ」と語った。
「Interop」の名称は、英語の「Interoperability(相互運用性)」にちなんでいる。もともとは異なるネットワーク機器メーカーの製品同士を相互に接続して、安定稼働などを技術検証する場だった。会場最大の見せ場がその環境となる「ShowNet」であり、その運用を支えるネットワーク運用センター(NOC)になる。Interopは米国で始まり、一時期は世界各地で開催されたが、現在までNOCを構築、運用しているのは日本だけとなっている。
ShowNet NOCチームメンバー ジェネラリストを務める国立天文台 情報セキュリティ室 先任研究技師の遠峰隆史氏
ShowNet NOCチームメンバーでジェネラリストを務める国立天文台 情報セキュリティ室 先任研究技師の遠峰隆史氏は、「コロナ禍に各社からの参加規模が縮小してしまっていたが、復活しつつある」とした。2023年のShowNetの規模は、提供機器・製品・サービスの総数が約1600台、ケーブル総延長が約20.0km、光ファイバー総延長が約7.2kmで、ネットワークは前回よりも大規模になった。
ShowNetやNOCの構築・運用などに携わるコントリビューターは延べ675人(前回533人)と大幅に増加。内訳はNOCメンバーが28人、一般公募のボランティアとなる「ShowNet Team Member」(STM)が37人、参加企業のエンジニアが610人で、エンジニアの参加が増えており、これからのネットワーク技術を担う学生や若手のSTMも幅広く活躍している。
近年のShowNetは、バックボーンやコアネットワークなどにおける400Gbps回線の採用が進んでいたが、今回は、NTTが推進する次世代基幹網「IOWN」の相互接続性の検証を目的に、世界で初めてIOWNのグローバルコミュニティー「IOWN Global Forum」によるOpen APN(All Photonics Network)とShowNetが接続された。外部とShowNetを接続するエクスターナルネットワークは、Open APNの光8波長多重接続による容量1.01Tbpsのネットワーク、400Gbps(1回線)、100Gpps(2回線)で構成され、総容量はInterop Tokyo史上最大となる1.61Tbpsとなった。
Interop Tokyo 2023開幕直後の会場の様子
ShowNetのバックボーンにおいても400Gbpsが標準となり、この大容量環境を効率的に利用すべく、マルチテナントバックボーンはIPv6を活用するSRv6を中心に構成され、出展社の通信の収容にはレイヤー2接続を拡張するEVPN/VXLANを採用している。ShowNet向けセキュリティサービスでは、400Gbps対応の次世代ファイアウォールが実際に稼働する。
また、来場者向けに提供される無線LANサービスでは「Wi-Fi 6E」や、IoTを中心に低消費電力の接続性を提供する「Wi-Fi HaLow(ヘイロー)」が導入されている。高精細映像データなどをIP環境で利用する「Media over IP」では、非圧縮4K映像データの伝送や、特に放送コンテンツ制作などにおいて不可欠な時刻同期を高精度に行うPTP(Precision Time Protocol)に対応した機器が出展されている。