コロナ禍で日常に定着したハイブリッドワーク環境は、私たちに働き方の自由をもたらしました。しかし同時に、セキュリティの担保における新たな課題を生んでいます。そこで前回に続き、ここではITおよびセキュリティチームにとってエンドポイントセキュリティと並ぶもう一つの優先事項、デバイスのリモート管理と使い勝手について述べます。
見落とされがちな「オフライン」という落とし穴
ハイブリッドワーク環境の広がりに伴ってIT管理の複雑性が増し、セキュリティの必要性が高まってきました。その作業負荷を軽減する上でクラウドテクノロジーが役に立っていますが、100%有効というわけではありません。
例えば、リモートにあるデバイスの電源が落ちたり、オフラインになったりした場合は、どうなるでしょうか。データを持つデバイスを探し出し、保護することが不可能になる可能性があります。個人を特定できる情報、知的財産など企業秘密が含まれている場合は、重大なリスクとなります。これが、見落とされがちなオフラインのリスクです。
従業員の移動が増えるにつれて、人為的なミスも起こりやすくなります。また、デバイスを狙っている窃盗団も後を絶ちません。特に政府機関など規制の厳しい分野では、ノートPCの紛失や盗難が国家安全保障上のリスク(英文記事)となる可能性があります。現に、HPが米国、英国、フランス、ドイツ、日本の5カ国の、オフィスで働く従業員、リモートで働く従業員、またはオフィスとリモートで働く従業員が混在するハイブリッド組織のITおよびセキュリティリーダー1492人以上を対象に、2022年7月~8月に実施したハイブリッドセキュリティ調査(英語)によると、回答者の70%、日本の回答者(290人)の68%は、ハイブリッドワークによってデバイスの紛失や盗難のリスクが高まると述べています。
携帯電話ネットワークを使った新しい接続方法
このような懸念を軽減するために、IT管理者はどのような対策を取ることができるでしょうか。それは意外とシンプルで、最初のステップは、携帯電話ネットワークでリモートのコンピューター(デバイス)をつなげる新しい接続方法を確保することです。これによって、デバイスの電源が切れていたり、オフラインの状態であったりしても管理できるようになるからです。
重要なのは、この機能を利用して紛失や盗難にあったデバイスと接続し、不正に操作させないデバイスロックや、デバイスに保存されてデータを消去したりデバイスを初期化したりするワイプが行えるようになることです。この接続は、データの漏えいや侵害のリスクを低減できるだけでなく、PCの修復や交換の必要性を減らすことにも利用できるため、ITコストの削減にもつながります。いつどこでデバイスを紛失し、ロックや消去にどのくらい時間がかかったかを、ITチームは正確に報告できるようになるのです。
HPは、世界中でこのようなIT管理の接続ソリューション(英語)の構築に取り組んでいます。例えば、2023年3月に米国で発表した「HP Wolf Connect」サービス(未発売)では、デバイスの電源が落ちていたりオフラインの状態であったりしても、IT管理者がデバイスをリモートで管理できるようになります。携帯電話ネットワークを利用することで、HP Wolf Connectサービスでは接続性が安定し、IT部門はHPのプラットフォームの信頼できるルート、また、オフライン時または電源オフ時にも接続できるHPのデバイスの機能を利用して、各地にいるハイブリッドワーカーのデバイスを容易にかつ確実に管理します。サポートチケットの解決に要する時間と手間を節約し、紛失や盗難時もデータを保護、さらに潜在的なデータ侵害を低減することで資産管理を最適化できます。