HashiCorpは米国時間8月10日、ソースコードライセンスを「Mozilla Public License v2.0 (MPL 2.0)」から「Business Source License(BSLまたはBUSL)v1.1」に変更すると発表した。適用されるのは今後リリースされる同社製品で、同社のAPI、ソフトウェア開発キット(SDK)、他のほとんど全てのライブラリーはMPL 2.0のままだという。
BSL 1.1は、コピー、改変、再配布、非商用利用、特定の条件下での商用利用を可能にするソースアベイラブルライセンス。今回の変更により、同社は、Couchbase、Cockroach Labs、Sentry、そして、同ライセンスを2013年に開発したMariaDBと同じ道を進むことになるとし、いずれのケースにおいても、ライセンスによって商用スポンサーは商用化に関してさらなるコントロールが可能になっているとHashiCorpの共同創業者で最高技術責任者(CTO)を務めるArmon Dadgar氏は述べる。
今回のBSLの実装は、ソースコードの広い使用を可能にする追加の使用許可を含んでいるとDadgar氏は説明し、ソースコードを幅広く自由な利用に向けて共有するため、HashiCorpにとって公平かつ持続的な方法を提供するとの考えを示す。今回の変更に当たりオープンソースソフトウェア(OSS)ライセンスの専門家などの業界ステークホルダーと協業しており、自社の取り組みが業界の慣習に従ったものなるとしている。
同社は、変更の目標としてコミュニティー、パートナー、顧客への影響を最小限にすることを挙げる。同社製品のソースコードやアップデートは引き続き「GitHub」リポジトリーやディストリビューションチャネルで公開するという。
エンドユーザーは今後もコードのコピー、改変、再配布が非商用使用、およびHashiCorpに対する競合製品を提供するような場合を除いた商用使用ができるという。パートナーは、共通の顧客に向けたインテグレーションの構築を継続できる。同社は、クラウドサービスプロバイダーとの緊密な連携を続けることで相互の技術に対する深いサポートを可能にする。エンタープライズおよびクラウドマネージド製品の顧客に対する変更はないという。
HashiCorpのコミュニティー製品上に構築された競合サービスを提供するベンダーは、同社製品に提供される今後のリリース、バグフィックス、セキュリティパッチを組み込むことができなくなる。
Dadgar氏は、共同創業者のMitchell Hashimoto氏と同社を創設した当時、自社製品のオープンソース化を決定した際、「自由に利用可能なソースコードは、プラクティショナーが自由にソースコードをダウンロードして調べ、課題を解決することを容易にする」「自社製品を中心にしてエコシステムとコミュニティーを構築することは幅広い導入につながる」と考え、「ユーザーに対する透明性の重要性」を信じていたと述べる。
同社は10年にわたって製品や機能をオープンソースライセンス下で開発し、コミュニティーに提供しており、ユーザー、コントリビューター、パートナー、顧客の大きなコミュニティーを築くことができたとDadgar氏。同社は、オープンソース製品の研究開発に多額の資金を毎年投入し、商業的な努力によってユーザーコミュニティーの支援を継続しているという。
同社のアプローチは、クラウドプロバイダーとの緊密な提携を可能し、共通のユーザーや顧客、緊密の協業している多くのテクノロジーパートナーに向けて密接な統合を可能にしているとDadgar氏。しかし、ベンダーによっては、純粋なOSSモデルやOSSプロジェクトに関するコミュニティーの取り組みを自社の商業的目標のために利用する一方で貢献をしないという場合もあり、これはオープンソースの精神に反すると同氏は考える。
その結果、エコシステムがオープンで自由に利用可能なソフトウェアの提供を続けるためには、商用オープンソースモデルの進化が必要とDadgar氏。オープンソースは、イノベーションをコピーし、既存のディストリビューションチャネルで販売することの障壁を低くしたが、このような理由から、多くのベンダーがクローズドソースに移行しているという。しかし、この方法では、HashiCorpにおけるオープンソース導入の当初の目的を維持できないと同氏は述べ、このような理由からから今回の発表に至ったとする。
同社製品は、OSS、Enterprise、Cloudとこれまで区分けされていたが、OSS版は「コミュニティー版」と今後は呼ばれるようになる。BSLライセンスは、Open Source Initiative(OSI)によるオープンソースの定義に合致しない部分があるためだという。同社ウェブサイトにはオープンソースに関する記述が数多くあるが、このような文言の変更を今後数週間のうちに明確にするよう積極的に取り組みを進めるという。
同社は、自社のコミュニティー、パートナー、顧客に対するコミットメントに変わりはないとし、自社に対してコミュニティーが置いている信頼を理解しており、オープンアプローチ採用における当初の目標を維持するために取り組みを慎重に進めてきたと強調する。「コミュニティーと製品にこれからも投資をしていくことを楽しみにしている」(Dadgar氏)