シスコシステムズは、ネットワーク製品に関するメディア・記者向けの説明会を開催した。6月の年次カンファレンス「Cisco Live」で発表したネットワーク製品の新しいビジョン「Cisco Networking Cloud」について説明。「巨大なシスコが『ウサギ』のようになり、この変化へ速やかに取り組んでいる」(エンタープライズネットワーキング事業担当執行役員の眞﨑浩一氏)という。
シスコシステムズ エンタープライズネットワーキング事業担当執行役員の眞﨑浩一氏
眞﨑氏によると、Cisco Networking Cloudとは、オンプレミスやクラウドで使われる同社のさまざまなネットワーク製品を統合的にシンプルに運用できるようにする“ビジョン”だという。同氏は、「具体的にCisco Networking Cloudというブランドや製品、サービスが開発、販売されるわけではない」と前置きし、その背景から説明した。
同氏によれば、現在の企業では、働き方改革やコロナ禍への対応を通じて、業務システムやアプリケーションを利用するためのネットワークがインターネットベースとなっている実態がある。以前であれば、従業員はオフィスのLANから自社のサーバールームやデータセンターで稼働する業務システムにアクセスしていた。しかし今は、自宅などからインターネット経由でSaaSにアクセスするといったシーンが拡大している。
この状況は、ネットワーク運用の観点では「ベストエフォートのインターネット」が前提になり、セキュリティを担保して安定した通信のために企業が制御できる要素や領域といったものは、以前よりも制約を伴うようになった。一方で、従業員などのエンドユーザーは、通信が途切れず安心して利用できるネットワークを要望し続けている。
眞﨑氏は、「最も重要なユーザー体験において、例えば、ビデオ会議の途中に通信が途切れ、ユーザーが大きな不満を抱く。そのようなことがあらゆるアプリケーションで発生している。しかし、ベストエフォートのインターネットにおいてIT部門が理想的なネットワーク制御を行うことは至難の業だ。『全てをクラウドに移行すれば良い』と言っても長い時間を要し、引き続きオンプレミスでの運用を求める企業も少なくない」と話す。
現在の企業で利用されるネットワークは、ベストエフォートのインターネットを前提に複雑化しており、エンドユーザーの求める品質や安全性のためのIT部門によるコントロールが難しくなっているとする
同社の調査によると、企業の41%は出社やリモートを組み合わせたハイブリッドな働き方をしており、自社のワークロードの40%以上がマルチクラウドで実行されているという企業が3分の2に上る。IT部門としては、この実態においてアプリケーションへのアクセスの安全性をいかに担保するか、また、ネットワークやセキュリティの状態をどう可視化して把握するかという課題を抱いていることが分かった。同社の顧客からはネットワークに対して、シンプルであること、予測可能であることへの要望が強まり、より成果を重視する傾向が強まっているという。
また眞﨑氏は、同社が市場ニーズへの対応などや戦略の観点から、これまでにさまざまな企業やテクノロジーを買収し、統合なども進めてきているが、完全な形で実現するには至っていないケースもあると明かした。同社は、このような背景を踏まえて、Cisco Networking Cloudのビジョンを打ち出し、既にその実現に向けた行動を起こしているとする。
Cisco Networking Cloudのビジョンを具現化するに当たって眞﨑氏は、「Cisco Catalyst」や「Cisco Meraki」といった各種のプラットフォームをスクラッチで新たに開発するのではなく、各プラットフォームの特徴や強みを生かしながらユーザーが求める利用形態に応じてシームレスかつ柔軟に連携、運用できるようにしていくと説明する。
Cisco Networking Cloudで示している方向性