ガートナージャパンは9月14日、IT運用担当者がキャリアパスに不安を抱えているとする調査結果を発表した。過半数の回答者が自身のキャリアパスに何らかの不安や不満を抱えており、その具体的な理由として「新しい技術に触れる機会がない」(62.5%)、「他のIT部門のメンバーと比べて昇給・昇進が遅い」(59.3%)、「重責であるにもかかわらず、待遇が悪い/評価されない」(57.1%)などが挙がった。
同社は2023年4月に、国内の従業員500人以上の組織を対象にユーザー調査を実施。そのうち、IT運用(オペレーション)に関わっている調査対象者に、現在の職種からのキャリアパスについて聞いている。
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調査では、上述の通り、DevOpsやクラウド、サイト信頼性エンジニアリング(SRE)、コンテナーといった「新しい技術に触れる機会がない」が最多の回答だった。また、「IT部門でありながらエンジニアとしての専門性が身に付かない」(48.9%)も4番目に多く、IT運用担当者として働いていても、技術者としての専門性、特に最新のクラウドネイティブ技術を獲得する機会がないことに対する不安を抱えている現状が浮き彫りになった。
これを受け、シニア ディレクター アナリストの米田英央氏は「回答者の中には、技術を身に付けるには現職を辞めて早く別の仕事に就かなければと考えているIT運用担当者も多いだろう。インフラストラクチャー/オペレーション(I&O)のリーダーは、IT運用担当者にとって魅力ある職場を形成するために、新技術を含めたテクノロジーを習得する機会を提供できるよう努める必要がある」とコメントした。
2番目に回答が多かったのは「IT運用担当は他のIT部門のメンバーと比べて昇給・昇進が遅い」で、次に「ワークロードが高く重責であるにもかかわらず、待遇が悪い/評価されない」が挙がった。「オンコールのシフトや残業が多く、永年勤続ができない」も30.8%で5番目だった。
ガートナーは、IT運用担当者は日常的な運用業務の責任が重く、繁忙になりがちであるにもかかわらず、他のIT担当者より待遇や評価が悪いと感じているといい、I&Oリーダーは「インフラ自動化などの従業員が重労働と感じているオペレーションの負荷を下げるITツールの導入を検討する」「ビジネス価値の低いプロセスなど付加価値が高くない仕事を廃止・排除する」「評価とそれに基づく待遇に関する合意形成プロセスを見直す」――などの取り組みを進める必要があると指摘した。
米田氏は「今回の調査では、IT運用担当者が『新しい技術が身に付かない重労働であるにもかかわらず評価されにくい仕事がIT運用である』と考えている現状が見てとれる。IT運用をリードするI&Oリーダーには、こうした不安・不満を解消するために、短期的には、例えば業務の効率化や信頼性向上を運用の自動化によって実現するなど、日々の改善活動で新技術を習得でき、他部門から評価されるよう仕事の形態を変化させる取り組みを進めることが求められる。そして中長期的には、評価に応じた合理的な待遇を得られる職場に進化させることが重要になる」と語った。