IDC Japanは、生成AIの取り組みに関する国内と世界の企業ユーザー動向調査の比較分析結果を発表した。日本企業は世界平均よりも生成AIの期待度が高く、同社は「比較的珍しい状況」と指摘する。
この調査は、日本、その他アジア、北米、欧州の従業員500人以上の企業に勤務するマネージャー以上でIT投資購入意思決定者を対象にしたウェブアンケートで、3月から継続的に実施しているという。
同社の分析結果によると、生成AIの取り組み状況(単一回答)について、「まだ何もしていない」との回答が3月時点では、世界が38.9%、日本が42.0%だった。しかし7月時点では、世界が22.0%、日本が18.0%と逆転した。
また、「可能性のある適用分野について検討を始めた」との回答でも、3月時点では、世界が36.9%、日本が34.0%だったが、7月時点では、世界が49.2%、日本が50.0%に。「2023年に生成AI技術に投資する/している」との回答は、3月時点では、世界が24.1%、日本が28.7%だったが、7月時点では、世界が24.0%、日本が32.0%と、いずれも日本が世界より高い結果だった。
同社は、「日本が優勢する状況は比較的珍しいと考えられ、このことからも改めて『ChatGPT』をきっかけとして国内企業がAI活用を再検討し、デジタルビジネスの計画と実行を加速していることがうかがえる」との見解を示した。
生成AIに対する貴社の現在の対応(単数回答、出典:IDC Japan)
企業が想定する生成AIのユースケースについては、国内と世界ともに、生産性向上に貢献する社内向け(コード生成、会話型アプリケーション、デザインアプリケーションなど)への期待が高く、マーケティングアプリケーションが低い傾向にあった。ただ、世界はユースケース全般への期待があるという。
生成AIが影響を与える事業領域では、共通してソフトウェア開発/デザイン部門が高く、世界ではサプライチェーンやカスタマーサービス部門への影響を想定する割合が日本より高い傾向にあるという。
同社によれば、ユースケースのこうした傾向は、2015年以降の「第3次AIブーム」における機械学習の利用開始時期に類似しているとする。ただ、「当時と現在を単純比較はできず、生成AIの特性である生成や要約などの新たな機能が追加されている点、ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)などの異なるリスクが加わっている点を考慮する必要がある。今後の企業における実証実験の結果や、AIのリスク管理、ガバナンスの運用次第だが、世界が多様な目的で生成AIの利用を検討している傾向を考えると、国内企業は生成AIの潜在的な可能性と活用用途をさらに探る必要がある」と指摘している。