レッドハットは11月15日、国内のエッジビジネスに関する説明会を開催した。同社はエッジおよびハイブリッドクラウド環境全体に運用の一貫性をもたらす「Red Hat Device Edge」を展開し、多様化する利用シーンへ対応する。
11月に一般提供を開始したRed Hat Device Edgeは、エッジ環境のデータ収集で発生する通信コストやセキュリティコスト、多様化するエッジの最適化に用いられるプラットフォーム。「Red Hat Linux Enterprise」とワンバイナリーで動くエッジ、およびスモールファクター向けのMicroShiftを掛け合わせ、コンピューター資源が乏しい環境でも実行できる。既存のアプリケーションやAI、機械学習(ML)、クラウドアプリケーションへエッジのワークロードを適用させる仕組みだ。
既に先行導入している企業では数百のPLC(Programmable Logic Controller)に導入し、一つのゲートウェイを経由してデータを収集するデバイスゲートを実現している。
レッドハットは個別の産業界へRed Hat Device Edgeを展開し、通信業界への展開を目指す。同社 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部の小野佑大氏は、「ドローンに代表されるデバイス領域を含めたプラットフォームとして提案」を目指していると説明した。
Red Hat Device Edgeの特徴
先行導入したジェイアール東海情報システムは、IoT/MLプラットフォームを構築するため、Red Hat Device Edgeを利用した基盤を構築した。同社はコロナ禍における減収への対応から、デジタル技術の再強化に取り組むため、電気設備からのリアルタイムデータ収集に取り組んできたが、成果には至らなかったという。
そこで保守担当の従業員がデータサイエンティストとしてデータ分析、MLのモデル開発に取り組み、データパイプラインやMLOpsを踏まえた生産性向上やコスト削減を目指している。また、エッジデバイスの高性能化に伴い、MLモデルの推論はエッジ側で実行して、結果および関連データのみをクラウドに送信。後続処理を行う仕組みを構築した。
同社 取締役 DX企画部長の石川勝隆氏によれば「現場の従業員やドローンで画像を用意し、目視点検を自動化するため、RTMP(Real-Time Messaging Protocol)サーバーで受診したデータをクラウドに送信」しているという。今後はコンテナーレジストリに登録されたデータをRed Hat Device Edgeに送信し、再学習を行う予定だ。
ジェイアール東海情報システムの構築環境
マクニカはNVIDIAの「Jetson Orin」や「NVIDIA Omniveerse」を組み合わせてデジタルツイン環境の構築に取り組んでいる。多くの製品やソリューションを手掛けるマクニカだが、生産現場の最適化を図るため、各デバイスから取り込んだ画像のAI分析、出力結果の活用に用いてきた。
しかし、マクニカ クラビスカンパニー 第1技術統括部 技術第3部 部長代理の野本裕輔氏は「保守運用に関する課題がある。PC系と異なり、組み込み系は運用面の課題が日々発生しかねない。だが、Red Hat Device Edgeなら遠隔デバイスの保守も容易になる。また、デバイス追加時に発生する連携の負荷も少ない」と評している。
マクニカのRed Hat Device Edgeに対する効果
たけびしは、各種設備からデータ収集および連携を行うソフトウェア「デバイスゲートウェイ」の開発、販売する企業だ。今や製造現場のデータ活用は欠かせないが、同社はさらなる有用性を高めるため、Red Hat Device Edgeを採用した。
同社 技術本部 ソリューション開発部 オリジナル商品開発課 主事の小林弘明氏は「従来の生産現場はシステムと切り離された別のネットワークで構築されるスタンドアローンが多く、新たな生産システムを構築する際の課題となっていた」と既存課題の解決に役立ったと説明している。
たけびしのRed Hat Device Edge実装