倉庫テックの導入で現場従業員の8割以上が士気向上--ゼブラ調査

大場みのり (編集部)

2023-12-21 07:00

 バーコードスキャナーなどの自動認識機器を展開する米Zebra Technologies Corporation(ゼブラ)は「未来の倉庫業務に関するグローバル調査2023」を実施し、日本法人のゼブラ・テクノロジーズ・ジャパンが12月19日に調査結果を解説した。同社は(1)サプライチェーンの弾力性と敏捷(びんしょう)性、(2)パーフェクトオーダーと収益性の確保、(3)自動化・従業員の強化・労働計画――に分けて説明した。

 同調査は2023年3~4月、米調査会社Azure Knowledge Corporationがオンラインで実施。調査対象は、北米、ヨーロッパ、中南米およびオーストラリア、中国、インド、日本、シンガポールのアジア太平洋地域(APAC)において、製造、小売、運輸・物流、卸売販売関連企業で倉庫/配送センターの運営・管理を担う企業幹部と従業員の計1465人となっている。

 同調査によると、倉庫業界の企業幹部のうち「倉庫の近代化のスケジュールを前倒しする、あるいはその予定」と回答した割合は世界全体で73%、APACで69%に上った。2024年までの優先度は「クラウドベースシステムへの移行」(91%)、「労働力の最適化」(90%)、「ワークプロセスの合理化」(同)、投資先は「サプライチェーン全体の可視化」(91%)、「サプライヤーマネジメント」(同)、「デジタルツイン」(89%)、「ロボティクス」(87%)の順に高い。ウェアラブル端末の活用が期待される業務として、商品の返品や受け入れ、ピッキングなどがある。

 (1)では、戦争などによる世界的な経済の混乱で従来の倉庫オペレーションの脆弱(ぜいじゃく)性が露呈し、あらゆる規模の企業が弾力性を強化せざるを得なくなっているという。こうした中、企業幹部と従業員の77%は「在庫切れと在庫の不正確さによる生産性の課題」を認識している。企業幹部の76%、従業員の82%は「在庫管理の精度とアクセス性を維持するには、信頼性の高い在庫管理ツールが不可欠」と回答した。

ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン 社長の古川正知氏
ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン 社長の古川正知氏

 ゼブラは、従業員や商品、機器といった倉庫の資産の可視化に向けて、RFIDのほか、3Dセンサー、マシンビジョンの活用を提唱している。その上で、収集されたデータを分析し、洞察情報をリアルタイムに管理者へ提供する流れが求められる。ゼブラ 社長の古川正知氏は「こうしたことが実現すると、データ駆動型の意思決定が可能となり、不測の事態が起きても柔軟に対処できるようになる」と期待を示した。

 企業幹部の多くは2024年中に倉庫全体へのセンサーテクノロジーの導入を進めることを計画しており、導入予定のソリューションは「パッシブ型RFIDタグとセンサー」(81%)、「パッシブ型RFIDハンドヘルドリーダー」(71%)、「固定式産業用スキャナー」(67%)の順に多い。パッシブ型とは、内部にバッテリーを持たず、制御用コントローラーからの電磁波を動力源とする形態。

 (2)では、顧客の注文に完全に応える「パーフェクトオーダー」を遂行すると同時に、収益性を確保することが求められる。古川氏は「世界のEC市場が2028年までに300%成長する」という米調査会社SkyQuest Technologyの予測を引用した一方、「ECでは顧客の需要や受取方法/時間などがさまざまで、倉庫業界では業務の再構築に取り組んでいる最中」と指摘した。

 2022年以降、倉庫オペレーション上の課題は急増しており、例えば「返品管理」を課題とする企業幹部は47%と前年比27%増となった。こうした中、企業幹部は2024年までに目指している取り組みとして「リアルタイム在庫トラッキング」(66%)、「倉庫内スペースの再設計」(64%)、「設備をベースとした固定的な自動化からフレキブルな自動化への変更」(同)などを挙げている。

 企業はサービスレベル契約(SLA)不履行を防ぐ必要があり、主なエラー率の要因として「仕分けと梱包(こんぽう)」(47%)、「注文ピッキング」(46%)、「棚入れ」(43%)が挙がっている。加えて、従業員の70%が「作業量の管理について憂慮し、生産性目標を達成するために強いストレスを感じている」と回答した。

 (3)では、労働力不足が続く中、ソリューションの導入を通して現場の従業員の能力を向上させる動きが見られる。企業幹部の73%は「現場の最前線で働く従業員に使いやすいテクノロジー機器やソリューションを提供することが最優先事項である」と考えているという。

 職場に導入されたテクノロジーは、熟練した人材を引きつけるとともに維持する上で重要な役割を担っており、従業員の83%が「仕事をやりやすくするツールや自動化ソリューションが提供されると、会社からより評価されていると感じることができる」と回答した。「昔はテクノロジーによって自分の職が奪われてしまうという議論があったが、今は仕事がやりやすくなるという認識を持っている」と古川氏は傾向を説明した。

 人を中心としたデジタル化の動きに伴い、2028年までに導入予定の機器はウェアラブル端末が主流となっている。具体的には「ウェアラブルコンピューター」(94%)、「モバイルコンピューター」(94%)、「堅牢/超堅牢バーコードスキャナー」(91%)、「堅牢タブレット」(91%)などが挙がっている。一方、企業幹部は自動化ツール導入の障害として「予算」「レガシーシステムとの同期」「サービスとサポート」「投資対効果(ROI)の判断」「従業員のトレーニング」と回答した。

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