スキル不足が人工知能(AI)プロジェクトの進展を妨げているという問題についてはよく知られているが、もう1つの大きな阻害要因に、データの複雑さがある。IBMが新たに発表した調査レポートによれば、AIプロジェクトの成功を阻む主な2つの要因は、AIに関するスキルや専門知識の欠如(回答者の33%が言及)と、データが複雑すぎることだった(25%)。
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ITプロフェッショナル8584人を対象として実施されたこの調査では、企業の過半数(58%)が、現在も積極的にAIを導入しているわけではないことも明らかになった。AI未導入企業における生成AI導入の最大の阻害要因は、データプライバシー(57%)と、信頼と透明性(43%)だった。
一方、AIを導入済みの企業では、大きな阻害要因として、データの出所の追跡(37%)や、バイアスの低減(27%)などデータに関する問題も挙げられていた。この調査結果からは、信頼できるAIの実現に向けた取り組みを進めている企業も多いことが分かる。また企業の約4分の1(24%)は、ビジネスアナリティクスやインテリジェンスに関する能力の強化を目指していたが、これらの取り組みにも一貫性のある高品質なデータが必要だ。
しかしAI業界には、企業では、AIで実現しようとする目標に必要なデータの準備が整っていないことが多いと警鐘を鳴らす専門家もいる。PwCで米国のデータ、アナリティクス、AIの責任者を務めているMatt Labovich氏は、「最高情報責任者(CIO)やテクノロジー担当役員が生成AIを自社の技術スタックに組み込むためには、それに合わせてデータ戦略を適応させる必要がある」と述べている。「それには、データをよく理解し、新たな技術がもたらす変革の影響に備えなければならない」
またBristleconeのAIおよびアナリティクス責任者であるShipra Sharma氏は、テクノロジーの専門家やその所属企業は、データセキュリティや、AIによる意思決定に関する倫理や、AIリテラシーの課題に取り組む必要があり、「この技術は新しいため、まだAI教育は進んでおらず、多くの人は自分で使い方を模索せざるを得ない状況に置かれている」と指摘している。
Sharma氏は、積極的にAI技術に取り組んで従業員を教育し、適切なセーフガードを導入することで、リスクを軽減しながら生成AIのデータ管理に関するメリットを享受できると述べ、「こうした手順を整備すれば、データを扱う能力が高まり、業務を拡大する能力に関して大きな優位性を得られる」と主張した。
またLabovich氏は、AIプロジェクトを進展させたいと考える企業は、「バランスを取り、生成AIの進歩における非構造化データの役割の重要性を認識する」必要があると述べている。
Sharma氏も同様の意見を持っており、「企業が非常に複雑な問題を解決するために、構造化されたデータを使って構築した生成AIが必要だとは限らない。効率の観点から見れば、単純なアプリケーションが非常に大きな節約につながることも多い」と話した。