1人1台の情報端末を全国の児童・生徒に配布し、高速大容量の通信ネットワーク環境を整備する文部科学省の「GIGAスクール構想」。2021年度に本格始動し、第2期といえる2024~2028年度の「NEXT GIGA」では端末の更新やさらなる活用が求められている。
つくば市立研究学園小学校(茨城県つくば市)の内田卓教諭は、2020年のプログラミング教育必修化を受けて、プログラミングを取り入れた理科の授業を開発してきた。これにより、論理的な思考力を育み、各単元を一層深く理解してもらうことを目指している。内田教諭に授業内容やICT教育の意義、アイデアの着想方法を聞いた。
つくば市立研究学園小学校の内田卓教諭
同教諭は、2024年4月につくば市立研究学園小学校に着任。小学2年生の担任を務めるほか、つくば市独自の教育課程「つくばスタイル科」の一環で行われる児童のプログラミング学習を指導している。
前任校では理科専科として、ビジュアルプログラミング言語「Viscuit(ビスケット)」や教育用マイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」を活用し、小学3~6年生の理科の授業にプログラミングを取り入れてきた。
内田教諭は「プログラミング教育の授業例は高学年の単元が中心だったが、それだけではもったいないと思い、理科を学びはじめる小学3年生からプログラミング的思考を育成する授業を開発した。段階的にレベルアップし、6年生の授業ではそれまで学んだ成果を最大限発揮してもらうことを目指している」と語る。
2023年度は、Viscuitを活用した生命領域の授業を開発。Viscuitでは、絵を描くことでプログラムを作成できる。ユーザーは背景色を選択して絵を描き、メガネマークの左右のレンズに当てはめる。絵の位置を変えると進む方向が変わり、左右で異なる絵を入れると絵が変化する仕組みだ。これにより、思い描くアニメーションを実現するための動作や順序を学ぶことができる。
6年生はViscuitで生き物の絵を描き、動かすことで「食物連鎖」を学んだ。単に知識を吸収するのではなく、単元の最後にこれまで学んだことをプログラミングで表現することで、理解が一層深まるという。「Viscuitは低学年向けのツールと見られがちだが、6年生の授業にも応用できると思った。食物連鎖を表現するためにメガネを数十個も使い、大規模な作品を作った」と同教諭は振り返る。
内田教諭は現在、小学2年生が学ぶ教科でITツールを活用した授業を開発・実施しており、プログラミングの基本を教えることを目指している。図工の授業では粘土を使って作品を制作後、各自のタブレット端末で写真を撮影。協働学習支援システム「STUDYNOTE(スタディノート)」などで共有し、クラスメートに感想を送り合う。ウェブアプリ「KOMA KOMA×日文」を使い、作品の位置を動かして写真を撮ることで、コマ撮りアニメーションの制作にも挑戦した。
プログラミングをはじめとしたICT教育で児童が得られるものは、プログラミング的思考やITスキルだけではない。疑問に思ったことを自分で調べる中で知識が深まったり、制作物を皆の前で発表することでプレゼンテーション力が身に付いたりすることが期待できるという。