AIとMLが切り拓くHRの新時代

第1回:人材の力を最大限に高めるための最新AI活用法

藤田周 (ワークデイ)

2024-05-23 07:25

 人手不足、従業員エンゲージメントの向上、リスキリングの必要性など、人事部門は近年、多くの課題に直面しています。これらの課題を克服するには、昨今注目を集める人工知能(AI)と機械学習(ML)の活用が欠かせません。本連載では、こうしたAIやMLがビジネスに与える影響について、「HR=人事」に焦点を当ててひも解きます。

 生成AIが脚光を浴びる昨今、AIとMLのユースケースは日々増え続けています。業界を問わず多くの企業で、AIとMLが人事・財務をはじめとする業務の自動化や意思決定の推進に活用され始めているのです。AIとMLは、人間とテクノロジーをつなぎ、相互の力を最大限引き出すものであるといえるでしょう。

 一方で、どの企業においても、やはり実際の事業運営の根幹は「人」にあります。未来の働き方を担う最高経営責任者(CEO)や最高人事責任者(CHRO)にとって、重要な決定をする際には、常に従業員を中心に据えつつAIやMLの強みを生かしていくことが大切になってきます。

 また、最近のWorkdayの調査では、企業の意思決定者層の65%が、従業員エクスペリエンス(EX)の向上にAIとMLが大きな役割を果たしたと回答しています。AIとMLをうまく活用することで、従業員の生産性と適応力を高めることもできるのです。

AIを活用して全従業員のスキルと能力を総合的に把握

 これまで企業では、人材の募集・採用・定着を図る際に、過去と現在のポジション、経歴や学位などに重点を置いてきました。しかし、仕事の性質が進化して人材獲得競争が続く中、人材に対する企業のアプローチは大きく変わりました。今、前述の要素に代わって注目度が高まっているのが、人材のもつ「スキル」です。

 スキルは、人材・キャリア開発、パフォーマンス管理、後継者育成計画などあらゆる人材管理の指標となるものです。人材のギャップを解消し、キャリアアップの機会を提供するためには、スキルベースの人材戦略が必須であることに各企業が気付き始めたのです。今日の人材市場において、スキルはいわば新たな「通貨」のような機能を果たしています。

 スキルベースの組織へと転換するためには、プロセスの自動化と、スキルデータの可視化を実現できるテクノロジーが必要となります。ただ、往々にして、スキルは細分化され、変動的かつレベルが明確に定義されていない場合が多く、企業や人事リーダーにとってスキルデータの把握は難しい課題です。ビジネス全体にわたって従業員のスキルを管理・維持するとなると、大変な時間と労力が必要となり、規模の拡大も難しく、データの整合性もとりづらくなってしまいがちです。

 このようなケースで課題解決の糸口となるのが、人事システムにAIとMLを組み込むことです。MLとディープラーニングの技術を、スキルのオントロジーとスキル関連データに組み合わせることで、今いる従業員がそれぞれ所有するスキルに基づいて、役職やギグワーク(個別の案件)に適した人材の特定、配置計画、マッチング精度の向上が可能となるのです。

 さらに、AIとMLを活用することで、従業員一人一人のスキルに基づいて、公正かつ合理的に業務や学習機会も推奨・提案できます。組織の中に存在するスキル全体がどのような相関関係にあり、隣接するスキルにどのように影響を及ぼしているかを示すことも可能です。ビジネス環境に合わせてスキルも常に進化していくことが当たり前となってきた今、AIとMLを活用してスキルを総合的に把握できることは、ビジネスの前進に大いに役立つでしょう。

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