松岡功の「今週の明言」

「人員」のスキルシフトで「人材」を強化せよ

松岡功

2024-05-24 10:40

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本ビジネスシステムズ 代表取締役社長の牧田幸弘氏と、クラウドフレア・ジャパン 執行役員社長の佐藤知成氏の「明言」を紹介する。

「エンジニアの確保と育成が最重要課題だ」
(日本ビジネスシステムズ 代表取締役社長の牧田幸弘氏)

日本ビジネスシステムズ 代表取締役社長の牧田幸弘氏
日本ビジネスシステムズ 代表取締役社長の牧田幸弘氏

 日本ビジネスシステムズ(JBS)は先頃、2024年9月期 上半期(2023年10月~2024年3月)の決算と今後の業績見通し、および現在進めている2025年9月期までの中期経営計画の進ちょく状況について発表した。牧田氏の冒頭の発言はその発表会見で、同社にとっての今後の最重要課題について述べたものである。

 JBSはMicrosoftのクラウドサービスを活用したソリューションを主にエンタープライズ(大手)企業に提供しているITサービスベンダーである。ここでは、牧田氏が同社の事業環境として説明した内容が興味深かったので取り上げたい(図1)。

(図1)JBSの事業環境(出典:JBSの決算説明資料)
(図1)JBSの事業環境(出典:JBSの決算説明資料)

 同氏はまずJBSの事業状況について、「お客さまのIT需要は非常に旺盛で、事業は順調に拡大しており、それに伴って体制の強化に努めている。その意味では、特にエンジニアの確保と育成が引き続き最重要課題だ」と、エンジニアをはじめとした人材の確保と育成を経営課題に挙げた。冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。

 顧客動向としては、「当社のお客さまにおいては、『Microsoft 365』がコミュニケーション基盤としてほぼ導入された状況だ。その動きも含め、お客さまがデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進される中で、クラウドの活用が大きく広がってきている。クラウドの活用が広がることで、セキュリティ強化に対する需要も高まってきている。そうしたお客さまのニーズをしっかりと捉え、質の高いソリューションの開発、提供に努めていきたい。さらに、日系のグローバル企業のお客さまから、グローバルで一貫したITガバナンスを行いたいというご要望もいただくようになってきた。そうしたニーズにもしっかりと応えていきたい」と説明した。

 メーカー(IT業界)動向については、「Microsoftの生成AIサービス『Copilot』に対して、お客さまから多くの引き合いをいただいており、徐々に導入が進んでいる。さらにMicrosoftのみならず、ほとんどのIT企業がさまざまな形で生成AIへの投資を強化している。当社としてもそうした生成AIをお客さまが十分に活用できるように努めていきたい」と述べた。

 そして、注力領域については、改めて「(エンジニアをはじめとした)人材の確保と育成に注力していく」ことを強調した。この点について牧田氏は、「新卒およびキャリアの採用を積極的に進めており、今のところ人員は確保できているが、今後は既存の人員も含めてさらなるスキルシフトを行い、新しい分野に向けた人材の育成に注力していく必要がある」と説明した。

 「新しい分野」とは何を指すのか。同氏は次のように述べた。

 「Microsoftは全ての製品やサービスにCopilot機能を組み込んだ。当社としてはこれを全社員が社内業務で使えるようにし、そのノウハウをお客さまに提供していくことが大命題だ。そのための専門組織も設置した。この取り組みを全社一丸となって進めていきたい」

 牧田氏の話で筆者が特に興味深かったのは、「人員」と「人材」という言葉を使い分けたことだ。筆者の解釈では、人員は単なる「頭数」で、その中からやるべきことをやれる能力を持った人が、人材だ。JBSと同じく「人材の確保と育成が最重要課題」というのは、IT企業にとどまらず、DXを進める全ての企業にとってのハードルとなっている。JBSにはスキルシフトのノウハウもどんどん発信していってもらいたい。

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