日本マイクロソフトは9月12日、顧客向けのセキュリティカンファレンス「Microsoft Digital Trust Summit 2024」を都内で開催した。基調講演では、複雑なセキュリティ対策の運用の統合やAI活用、アイデンティティーをセキュリティの中心に据えるアプローチなどを訴求した。
日本マイクロソフトの岡嵜禎氏
同社は、世界的に生成AIソリューション「Microsoft Copilot Solutions」を推進し、セキュリティ分野向けには4月から運用業務支援の「Copilot for Security」を本格提供している。カンファレンスの基調講演では、まず執行役員常務 クラウド&AI ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏が、同社のAI戦略の概要を説明した。
岡嵜氏は、同社のAI戦略は「AIを使う」と「AIを創る」にフォーカスし、そのベースに「より安全なAI」を位置付けていると説く。
「AIを使う」では、Microsoft Copilotにおいてユーザー個人の支援から組織の支援、さらにはエージェントとして個人と組織のさらなる生産性向上を手助けしていくという方向性を示した。「AIを創る」では、生成AI開発を支えるOpenAIとの協業など多様な大規模言語モデル(LLM)のサポート、開発環境の「Copilot Stack」や「Azure OpenAI Services」の提供、NVIDIAやAdvanced Micro Devices(AMD)らとの連携による基盤があるとした。
「Secure Future Initiative」
それらのベースにある「より安全なAI」では、「Secure Future Initiative」を掲げる。ここでは、製品やサービスの設計段階からセキュリティを組み込む「セキュアバイデザイン」、標準でセキュリティの機能や能力を有効とする「セキュアバイデフォルト」、安全な運用を行う「セキュアオペレーション」の3つを据え、アイデンティティーやIT環境の保護、脅威の検知と対応、万一の被害などからの速やかな復旧などを重点項目に位置付ける。岡嵜氏は、こうしたAIの推進で、同社がセキュリティを最優先事項に置いていると強調した。
続いて登壇した米Microsoft セキュリティソリューション領域担当コーポーレートバイスプレジデントのAndy Elder氏は、政府や企業、個々人のセキュリティへの要望と同社の取り組みを示した。要望は、大きく「さらなる安全」「コンプライアンスの維持」「TCO(総所有コスト)の削減」「継続的な効果の証明」の4つだという。
米MicrosoftのAndy Elder氏
Elder氏によれば、現在のサイバー犯罪の経済的な規模は、国内総生産(GDP)換算で年間8兆ドルの世界第3位(中国とドイツの中間)に相当し、年率15%で拡大する。AIの悪用といった気になる動向もある中でサイバー犯罪などの脅威が拡大する状況に、「さらなる安全」が求められているとした。
ここで同社は、岡嵜氏が触れたAIのセキュリティ活用やSecure Future Initiativeに加え、毎日78兆回のセキュリティ脅威の兆候信号を受信するなど、世界各地で発生する複雑な脅威の動向を捕捉している。Elder氏は、セキュリティ対策環境も複雑だと指摘した上で、同社がデータ、アプリケーション、アイデンティティー、ユーザーを中心に、脅威の全容(サイバーキルチェーン)を捉まえた保護を提供すると述べた。
また、「コンプライアンスの維持」では、各国・各業界の多様な法令や規制、標準に準拠することでユーザーの要請に対応しており、TCOの観点ではセキュリティ対策環境を統合した運用を実現することでTCOを6割削減し、231%の投資収益率(ROI)を達成できるなどと示した。
マイクロソフトのサイバーセキュリティレファレンスアーキテクチャー
「継続的な効果の証明」では、世界で約400万人とされるセキュリティ人材の不足の課題に向けて、Copilot for Securityなどのテクノロジーの提供による業務支援や教育による育成、アイデンティティー中心の新たなセキュリティ対策のアプローチといった幅広い取り組みを推進し、同社顧客の安全を担保し続けていくと語った。