Microsoftはシンガポール時間4月28日、若い女性をはじめとした歴史的・制度的に十分な支援を受けられていない人々が、サイバーセキュリティ分野におけるスキルやキャリアを獲得できるよう、アジア地域において新たなパートナーシップを開始すると発表した。
この取り組みは、同社のプログラム「Ready4Cybersecurity」の一環として行われる。同プログラムは、サイバーセキュリティ業界への参入を目指す若者を支援する新たなキャリアパスを作るために設計・監修された。設立から2年目を迎えた同プログラムは、2025年までに10万人の若い女性やマイノリティーの人々がサイバーセキュリティ分野のスキルや資格を得ることを目指している。これにより、同分野の雇用機会を高めるとともに人材の格差を是正し、多様性の向上を図る。
Microsoftの「Digital Defense Report」によると、2022年における1秒当たりのパスワード攻撃の推計は、前年比74%増の約921件だった。サイバー攻撃はしばしば壊滅的な影響を及ぼし、サイバー侵害による平均損失額は435万ドルに上る。そのためアジア地域では、熟練したサイバーセキュリティ専門家の需要が高まっている。
2025年には全世界で350万人のサイバーセキュリティ関連人材が必要となり、サイバーセキュリティのスキルを持つ人材の需要は8年間で350%増加すると予測されている。特に同分野の労働人口に占める女性の割合は全世界で25%に過ぎないことから、女性が活躍する機会は非常に伸び代があるとしている。
Ready4Cybersecurityは官民連携のもと、業界で広く認知されたサイバーセキュリティの基礎、中級スキル、資格認定へのアクセスを提供することで、これまで十分な支援を受けられていなかった人々が現在求められている職種に就くことを手助けする。研修対象者の75%は女性と想定されているという。
Microsoftは2022年にReady4Cybersecurityを開始して以来、支援が不十分なコミュニティーに所属する1万9800人以上に研修を行い、約1万8300人にサイバーセキュリティ分野の手始めとなるスキルを提供してきた。2023年も同社はパートナー企業と協力しながら、サイバーセキュリティ分野における若い女性やマイノリティーの人々のスキルアップと資格認定を支援することで、ポジティブな影響をもたらすとしている。
この責任を果たすため、Microsoftは総合的な取り組みを行い、多様で包括的なサイバーセキュリティ関連人材を創出することを目指している。例えば同社は、研修システムを提供している。サイバーセキュリティのギャップに対処する重要な戦略として、教育機関が次世代の人材にサイバーセキュリティの知識を効果的に教え、「サイバー脅威の防衛者になる」という受講者のモチベーションを高められるよう、支援することがあるという。
各国政府との連携も拡大している。同社は“デジタル世界の平和”には、政府、テック企業、非政府組織(NGO)、国際機関など、複数のステークホルダー(利害関係者)が共通の目標に向かって協力することが必要だとしている。加えて、顧客企業やパートナーと緊密に連携することで、人材の採用方法を見直し、履歴書情報よりもスキルベースのアプローチに重きを置いた新たな手法を模索している。
今回の発表を受けて日本マイクロソフトは、シングルマザーが技術職として活躍することを支援する活動に取り組んでおり、これまで事務職、介護職、飲食業などで働くさまざまな人々に研修を提供してきたと説明する。対面式のコースでは、保育施設の利便性も考慮しているという。
同プログラムは、シングルマザーが自信と自立心を身に付け、人生を前向きに歩めるようにすることを目的としている。今後数年間において日本マイクロソフトは、マイノリティーの若者や工業高校の生徒など対象者を拡張するとともに、セイバーセキュリティ分野における女性の活躍を支援する非営利団体「WiCyS」とのパートナーシップを強化する予定だという。