Oracleは米国時間9月9~12日、「Oracle CloudWorld 2024」と「SuiteWorld 2024」を米ラスベガスで開催。同社は毎年両カンファレンスを別個で開催していたが、2024年は合同で実施した。
同11日に行われた「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の基調講演には、OCIのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるClay Magouyrk(クレイ・マグワイク)氏が登壇。3ラックから利用可能な「Dedicated Region 25」や「Oracle Database@Google Cloud」の一般提供開始を発表するとともに、富士通やUber、アニメーション会社Skydance Animationといった顧客の幹部と対談した。本記事では、ソブリンクラウドの提供に向けた富士通とOracleの協業を取り上げる。
OracleでOCIのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるClay Magouyrk氏(左)と富士通 SEVP システムプラットフォーム 執行役員の古賀一司氏
富士通とOracleは4月、日本の企業・団体のデータ主権要件に対応するソブリンクラウドの提供に向け、戦略的協業を発表した。富士通は、国内データセンターにおける顧客の安全なデータ管理を支援するため、規制/主権要件を順守したクラウド提供を可能にする基盤「Oracle Alloy」を導入。「Fujitsu Uvance」の重点領域の一つ「Hybrid IT」のクラウドサービスとして、2025年度から国内顧客向けに提供する。Alloyにより富士通は、OCIの100以上に上るサービスを提供することが可能となる。
富士通は、日本市場における地政学リスクや経済安全保障リスクへの対応に伴い、システムとそのデータを国内に保管したいというデータ主権ニーズに対応するソブリンクラウドを提供するとともに、顧客の複雑化したシステム運用を最適化し、継続的な安定稼働を支援する。
Oracle Alloyで実現するクラウドサービスでは、顧客の計画に合わせて富士通がクラウド環境のアップデートやパッチの管理を行うことで、一般的にパブリッククラウドの課題とされているクラウド環境の自動アップデートやパッチ適用の影響でシステムに不具合が生じる課題を解決するとしている。
基調講演のゲストとして登壇した富士通 SEVP システムプラットフォーム 執行役員の古賀一司氏は「Alloyは、Uvanceにとって理想的なプラットフォーム。OCIの完全な機能は、社会的な課題の解決やAIの主権確保に役立つ」と評した。
その上で、同氏は「富士通は、多数のミッションクリティカルなシステムをグローバルでサポートしている。多くの顧客はハイパースケーラーへの移行方法に悩んでいる。(1)最新のクラウドテクノロジーの利用、(2)運用の透明性確保、(3)データの制御――を同時に達成する必要があるためだ」と説明した。ハイパースケーラーのクラウドでは(2)と(3)、富士通のクラウドでは(1)に課題があるという。
こうした背景から富士通はOracleと戦略的協業を締結し、Alloyを活用したソブリンクラウドの提供を発表した。両社は約6カ月間議論を重ね、106個に上る日本のソブリン要件を満たすようにしたという。
Magouyrk氏は「このパートナーシップは素晴らしいものであり、富士通との協業を本当に喜ばしく思う」とコメント。その上で、富士通の未来に最も胸を高鳴らせることについて聞くと、古賀氏は「当社のソブリンクラウドを活用して持続可能な社会をグローバルで実現できること。自社のソブリンクラウドを日本だけでなくグローバルに展開することを考えている」と語った。
同基調講演後に開催されたアジア太平洋(JPAC)地域のメディアブリーフィングには、古賀氏と日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治が登壇し、協業の裏側に触れた。
古賀氏は「われわれは、OCIのリセールをするつもりはない。106個のソブリン要件を満たせるかどうかについてシアトルのメンバーらと徹底的に議論し、採用してもらえたことは大きなポイントである」と振り返った。
富士通はシアトルのOCI開発拠点に赴き、富士通/Oracleがそれぞれできること、両社が連携して初めてできることを整理したという。竹爪氏は「本社のメンバーも日本で起きていることを理解したいという思いが強く、その中で最適なモデルを見いだせた」と自信を見せた。
日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏(左)と古賀氏
(取材協力:日本オラクル)