AI分野に新たなプレーヤーが登場し、大きな混乱を巻き起こしている。
中国のAIスタートアップDeepSeekは先週、OpenAIの「o1」の性能を上回る場面もあるオープンソース推論モデル「DeepSeek-R1」の正式版をリリースし、話題を呼んだ。米国時間1月27日の「App Store」のダウンロード数は、R1がトップに立ち、それまで無料アプリダウンロードランキングの1位だった「ChatGPT」を上回った。DeepSeekはすでに、Hugging Faceの「Chatbot Arena」でも総合3位に上り詰めており、複数の「Gemini」モデルと「ChatGPT-4o」に次ぐ位置につけている。
しかし、OpenAIを追い落とした直後、DeepSeekはサイバー攻撃を理由に新規登録を制限するようになった。米ZDNETは本稿執筆時点で、他の人気AIチャットボットと同様にDeepSeekのテストを実施して、その実力を見極めつつ、登録制限の解除を待っているところだ。
梁文峰(Liang Wenfeng)氏が2023年5月に創設した(つまり創立2年にも満たない)DeepSeekは、既存のAI企業にオープンソースアプローチで挑んでいる。Forbesによると、DeepSeekの強みとして考えられるのは、同じくLiang氏が運営するヘッジファンドHigh-Flyerからのみ資金提供を受けていることだという。この資金調達モデルが、同社の急速な成長と研究を支えている。

提供:Screenshot by Radhika Rajkumar/ZDNET
DeepSeek-R1とは
正式版が先週リリースされたR1は、DeepSeekのフラッグシップ推論モデルだ。数学、コーディング、推論の複数のベンチマークで、OpenAIの定評あるo1モデルと同等か、それ以上の性能を発揮する。R1に関して特に興味深いのは、テクノロジー大手の他の上位モデルと異なり、オープンソースであるため、誰でもダウンロードして使用できることだ。
また、R1は訓練のコストが他の同等のモデルよりも大幅に低いため、安価に利用できる。参考までに、R1のAPIアクセス料金は、100万トークンで0.14ドルから。同等のレベルの料金が7.50ドルであるOpenAIと比べて、ごくわずかだ。
o1や他の米国製モデルとの長期的な競争に影響を与えそうな欠点としては、検閲がある。中国製のモデルでは、特定の話題がブロックされることが多い。つまり、機能は他のモデルと同等でも、一部のクエリーに答えられない可能性がある。米ZDNETに寄稿するTiernan Ray氏は2024年12月、「DeepSeek-R1-Lite」の思考の連鎖を説明する能力をo1と比較したが、結果はまちまちだった。
もちろん、どの人気モデルにも、独自のレッドチーミングのバックグラウンド、コミュニティーガイドライン、コンテンツのガードレール機能があるが、少なくとも現段階では、米国製のチャットボットが歴史的な出来事に関する質問への回答を控えることはないだろう。