日立製作所、業績予想をさらに上方修正--「国内IT市場は今後数年で相当な伸長」と期待

大河原克行

2025-02-03 06:00

 日立製作所は、「2024中期経営計画」の最終年度を迎えて、その最終コーナーに突入した。同社は1月31日、2024年度第3四半期累計(2024年4~12月)の連結業績を発表。同時に中期経営計画の“着地点”となる通期見通しを上方修正した。上方修正は上期業績発表時に続き2度目となる。

 新たに発表した2024年度(2025年3月期)の通期業績見通しは、売上収益が5500億円増の前年比0.3%減・9兆7000億円。Adjusted EBITが650億円増の同19.8%増・1兆1000億円、当期純利益が100億円増の同3.4%増・6100億円とした。

 売上収益は前年比で微減だが、これは2023年10月に連結対象から外れた日立Astemoを含めた比較となっているためだ。同社を除いた「デジタルシステム&サービス」(DSS)、「グリーンエナジー&モビリティ」(GEM)、「コネクティブインダストリーズ」(CI)の3セクターで見れば、上方修正後の売上収益が前年比13%増となり、Adjusted EBITで前年比29%増の1兆1070億円と、実態は力強い成長だ。

 今回は売上収益、Adjusted EBITのほかに、当期利益、コアCFC、ROICも上方修正した。決算説明を行った執行役専務 CFOの加藤知巳氏は、「セクター別では、GX(グリーントランスフォーメーション)需要が好調なGEMと、DX(デジタルトランスフォーメーション)需要が好調なDSSを上方修正した。2024中期経営計画の財務目標値をおおむね達成する見込みだ」と自信を示した。

日立製作所 執行役専務 CFOの加藤知巳氏
日立製作所 執行役専務 CFOの加藤知巳氏

 上方修正の要因は、2024年度第3四半期(2024年10月~12月)業績の好調ぶりだ。

 DSSでは、売上収益が前年同期比10%増の6967億円、Adjusted EBITが101億円増の971億円となった。フロンドビジネスがDXやモダナイゼーションを中心に成長。ITサービスはクラウドやセキュリティ関連などの「Lumada」事業が好調に推移した。また、サービス&プラットフォームは、GlobalLogicで欧州を中心に顧客の投資抑制が継続したものの、米国では回復基調にあるなど全体では増収を達成。国内のDXおよびクラウドサービスが好調だったことも業績を押し上げた。

 だが、ストレージ事業は価格競争と部材コスト上昇などの影響を受けて減少した。加藤氏は、「ストレージは第4四半期以降に収益性が改善する。部材購入方法の見直し、原価低減や価格改定といった対策を進めているほか、2025年度に向けて『Hitachi iQ』によるAIソリューションの拡充、ストレージ製品の機能強化も進めている」と述べた。

 こうした成果を踏まえ、DSSの2024年度通期見通しは、売上収益で500億円増額の前年比10%増・2兆8500億円、Adjusted EBITを20億円増の3800億円と上方修正した。

(日立製作所資料より)
(日立製作所資料より)

 加藤氏は、「国内IT市場は今後数年間にわたり相当な伸長を期待できる。幅広い業種で基幹システム刷新のニーズが強い。メインフレームのサポート終了や保守価格の高騰への対応も喫緊の課題となっており、レガシーシステムからオープンシステムへのマイグレーションを進め、その先にモダナイゼーションとDXにつなげるニーズがある。2030年ぐらいまではマイグレーション、モダナイゼーション、DXという流れが続くだろう」とコメント。

 さらに、「日立の強みは高信頼システムの構築力、運用力だ。金融システムや社会インフラといったミッションクリティカル領域で培った知見と、エネルギーやモビリティー、産業といったOT(制御系技術)領域のドメインナレッジを持っている。DXトレンドを捉えるとともに、生成AIをはじめとした先進テクノロジーやソリューションの知見が強みになる」と強調した。

 GEMは、2024年度第3四半期累計の売上収益が27%増の9921億円、Adjusted EBITが462億円増の935億円となった。日立エナジーや鉄道システムの堅調な推移と、日立レールによる仏Thalesの地上系交通システム(GTS)事業部門の買収、事業買収に伴う関連費用の減少、為替影響のプラス影響から増収増益になった。GEMの2024年度通期見通しも上方修正。売上収益で1400億円増額の前年比24%増・3兆7700億円、Adjusted EBITを250億円増額の3400億円とした。

 CIは、2024年度第3四半期累計の売上収益が9%増の8057億円、Adjusted EBITが220億円増の1007億円となった。計測分析システム、ビルシステム、インダストリアルデジタルの堅調な推移により増収増益を達成。だが、2024年度通期見通しを据え置き、売上収益で前年比3%増の3兆1500億円、Adjusted EBITで403億円増額の3610億円としている。

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