カスタマージャーニーが生まれた背景
かつてマーケティングの世界は、マスマーケティングが主流でした。広告を広く打ち出し、できるだけ多くの人にブランドを知ってもらう手法です。しかし、消費者の選択肢が増え、情報の流通が爆発的に広がる中で、一人ひとりの顧客がどのように商品・サービスにたどり着くのかを理解することが求められるようになりました。ここで生まれたのが「カスタマージャーニー」という概念です。
カスタマージャーニーとは、顧客が認知から購入、さらにはリピート・推奨に至るまでのプロセスを可視化するもので、これにより、企業はどのタイミングで、どのような情報を提供すれば効果的かを戦略的に考えられるようになりました。
カスタマージャーニーは、どのように活用されているか
カスタマージャーニーの考え方が普及するにつれ、企業はマーケティング施策をよりパーソナライズし、顧客ごとの最適な接点を見つけることに注力するようになりました。例えば、あるECサイトでは、以下のような各フェーズでのカスタマージャーニーを描きます。
- 認知:ソーシャルメディアの広告やインフルエンサーの投稿でブランドを知る
- 興味:公式サイトを訪問し、商品情報や口コミをチェック
- 検討:比較サイトやレビューを見て、最適な商品を選択
- 購入:キャンペーンや限定オファーで購入を決断
- ロイヤルティー:リピート購入、会員プログラムへの参加
このように、各フェーズで適切なコンテンツや施策を用意することによって、顧客の購買意欲を高め、ブランドのファンになってもらうことができます。
Z世代になって変化するカスタマージャーニー
「Z世代」(1996年以降生まれ)の登場により、カスタマージャーニーは、従来のものとは大きく異なってきています。Z世代の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 検索よりもソーシャルメディアが主な情報源:Google検索ではなく、InstagramやTikTokのレコメンド機能を活用して商品を発見
- リアルタイムな評価を重視:公式サイトの情報ではなく、ユーザーのリアルな口コミやライブ配信での評価を参考
- 即決、短縮されたジャーニー:長時間の比較検討をせず、「バズったものを即購入」という行動が増加
例えば、あるZ世代の消費者がスキンケア商品を購入する場合の流れは、(1)TikTokで話題の美容インフルエンサーが「この商品、めちゃくちゃ良い!」と投稿、(2)その投稿に付いたリアルなコメントをチェック、公式レビューより信頼度が高い、(3)Instagramで他のユーザーの使用感をリサーチ、(4)口コミの良さを確認し、数分以内に購入――といったようになります。
このように、Z世代のカスタマージャーニーは「短縮」「ソーシャルメディア中心化」「リアルタイム化」が特徴となっています。