マイクロソフト創設50周年--4つのグラフでたどる急成長、停滞、復活の歴史(後編)

Ed Bott (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2025-04-18 07:00

 Microsoftは4月に創立50周年を迎えた。創設から世界的な企業への成長、試練の15年、クラウドによる巻き返しまで、同社の50年の歩みを4つの時代に分けて振り返る。今回はその後編である。(前編中編はこちら)

2015~2025年:クラウドへ

 2015年の元日を迎えたとき、Satya Nadella氏はMicrosoftのCEOに就任してまだ1年もたっていなかった。就任時の同社の時価総額は、約2690億ドル。本稿執筆時点では、2兆9000億ドルに上昇していた。創設当初を思い起こさせる急成長だ。

 時価総額の大幅な増加に関しては、やはりBallmer氏にも少しは功績があったと認めるべきかもしれない。何といっても、Nadella氏をCEO直属の幹部に昇進させたのはBallmer氏だ。Microsoftがクラウド事業の「Azure」と「Microsoft 365」に多額の投資をしていた時期にCEOを務めたのもBallmer氏だった。

 下のグラフのとおり、これらの投資は大きな成果を上げた。

提供:Chart by Ed Bott/ZDNET
提供:Chart by Ed Bott/ZDNET

 Nadella氏の功績は、不採算事業を断固として整理し、クラウドサービスに注力したことだ。

 先に触れた「Windows Phone」は、2014年初頭の時点では辛うじて延命されていたが、その後すぐに開発が終了した。Internet Explorerはまだ存続しており、開発リソースを食いつぶしていた。現在では廃止されているが、法人顧客の強い要望で、一部の例外的な用途(申し訳ない)に限って、厳重なサンドボックスモードでうまく隠されて存続している。

 一方、「Xbox」はうまくいっているようだ。堅調な動きを見せており、失速の気配はない。

 Windowsは今もMicrosoftにとって収益性の高い事業だが、もはや中核事業ではない。Officeの永続ライセンスも減少中で、代わりにMicrosoft 365のサブスクリプションが伸びている。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、PC事業の予期せぬ追い風となったが、それがいつまで続くかは不明だ。個人的なタスクにはスマートフォンが使われることが増えているが、Microsoftはこの分野にはほとんど関わっていない。また、企業の大半のワークロードがクラウドで実行されるようになったため、PCの買い替えサイクルが長期化している。

提供:Dimas Ardian/Bloomberg via Getty Images
提供:Dimas Ardian/Bloomberg via Getty Images

Microsoftの未来:AIとその先

 Microsoftの次の時代を特徴付けるテクノロジーは何だろうか。一般的には、AIだと考えられている。確かに同社はその方向に進んでおり、「Copilot」を全製品に組み込もうと強い姿勢で臨んでいる。1990年代に無数のジョークの的となったOfficeアシスタント「Clippy」と、「Siri」の対抗馬になるはずだったMicrosoftのスマートアシスタント「Cortana」、そしてAI駆動のCopilotは、全て1本の線でつながっている。

 Microsoftは2019年にOpenAIに10億ドルを投資して以来、同社と協力関係にある。パートナーとの競合という気まずい関係にあるが、提携以来、さらに120億ドル以上をこのパートナーシップにつぎ込んでいる。しかし、この投資は序章でしかない。真の投資は、膨大な計算能力が必要なワークロードを処理する巨大データセンターの建設だ。Microsoftは今年(2025年)に入ってから、800億ドルという巨額を投じて2025会計年度にデータセンターを建設する計画を発表した。

 これらは非常に大きな賭けであり、利益を得られる保証はない。

 歴史から何かを学べるとすれば、未来は予測不可能であり、最も大きな変化は誰も予想しなかった出来事から生じるということだ。とはいえ、Windows向けCopilotにどう思うか冗談半分で聞いてみた。

 Copilot、Microsoftの未来を予想して。

 未来を予想することはできませんが、トレンドとMicrosoftの戦略的な方向性を根拠として、いくつか洞察を提示することはできます。Satya Nadella氏のリーダーシップの下、Microsoftはクラウドファーストの企業への生まれ変わりを果たしました。成長の大きな原動力となったのはAzureです。AI、生産性ツール、ゲーム(Activision Blizzardの買収やXboxなど)への投資は、同社が今後も複数の分野への拡大を続けていく可能性を示しています。

 さらに、持続可能性に重点を置き、AIテクノロジーを製品に統合することで、Microsoftはイノベーションと倫理的なテクノロジー開発のリーダーという地位を確立しようとしています。

 もちろん、市場の動向や予期せぬ問題が同社の方向性に影響を与える可能性は常にありますが、Microsoftには、変化に適応して成功する能力が十分に備わっているようです。

 安全策をとって、かなり無難な予想をしたように感じる。しかし、Microsoftを何十年も見てきて、1つ確実に言えるのは、確実なことなど何もないということだ。そして、安全策というものはない。

屋外でポーズをとる、Microsoft共同創業者のBill Gates氏、提供:Joe McNally/Getty Images
屋外でポーズをとる、Microsoft共同創業者のBill Gates氏
提供:Joe McNally/Getty Images

この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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