オービックビジネスコンサルタント(OBC)は3月25日、国際会計基準(IFRS)への“コンバージェンス(収斂)”に対応する中堅中小向け統合基幹業務システム(ERP)パッケージ「奉行V ERP」シリーズの出荷を開始したことを発表した。
IFRSへのコンバージェンスとして、この4月以降に始まる会計年度では、「資産除去債務」とマネジメントアプローチを採用した「セグメント情報開示」の報告がすべての上場企業に義務付けられている。奉行V ERPの今回の“コンバージェンス対応版”は、この資産除去債務とセグメント情報開示に対応している。
資産除去債務は、工場や事業所など、法令や契約で除去が決められている有形固定資産について、撤去費用を事前に負債として計上しなければならない。たとえばアスベストなどの有害物質の処理費用を負債や費用として計上することになる。
マネジメントアプローチを採用したセグメント情報開示は、企業の経営層が意思決定に用いていたセグメント情報を外部に開示する。これまでのセグメント情報は事業の種類別や所在地別などの形で開示されていたが、今後は、企業が内部で使っている評価体系、たとえば取引先別や製品別などの形で外部に公開することが求められる。
OBCは、資産除去債務に「固定資産奉行V ERP」で対応する。資産除去債務の計上は、適用初年度に発生する特別損失の計算などが必要になり、煩雑さをいかに回避するかが課題とされる。
固定資産奉行V ERPで除去費用の割引前将来キャッシュフローと、割引率を入力することで複雑な現在価値への割引計算を自動で行う。期間経過による調整計算を毎期ごとに行い、資産計上した除去費用の減価償却を含めた償却費計算もできるという。各会計処理プロセスでの仕訳を自動で作成するという。
OBCでは「勘定奉行V ERP」がマネジメントアプローチに対応したことで、従来の業務フローを変えずにセグメント情報開示に対応できるとしている。
奉行V ERPの既存ユーザー企業は、年会費制の保守サポートサービスの範囲内として対応プログラムを提供する。奉行V ERP以外の奉行シリーズのユーザー企業には、アップグレードプランを用意、低コストでの導入が可能としている。
OBCはすでにIFRS対応のロードマップを発表しており、今回のコンバージェンス対応版は第1段階になる。第3段階までの間に順次、機能追加や制度対応を進めていくとしている。
第2段階は“移行期シミュレーション”になる。IFRSは早ければ2015年にも強制適用(アドプション)が見込まれる。第2段階では、アドプションの決定前に日本基準とは別に並行してIFRSをベースにした決算書のシミュレーションを作成することで、IFRSに対する経営意思決定の手助けをするという。IFRSの本質を企業に取り込んで、グループ経営の強化、決算早期化で利害関係者(ステークホルダー)への信頼性を確保できるとしている。
第3段階は、“アドプション対応版”になる。2012年中にはアドプションの判断が出される予定だが、この判断の後のアドプション対応版では、長期間のコンバージェンス項目も含めた各報告項目に随時対応していく。また、IFRSそのものの改正にも随時対応して、経営戦略で活用する管理会計の機能を強化していくとしている。