サーバ仮想化は、企業が情報システムを構築するための要素技術として一般的なものになった。部門や用途ごとに個別に構築され、運用コストが増していたサーバシステムを、仮想化技術によって少数のサーバへとまとめる「サーバ集約」は、既に多くの企業が実現しつつある。サーバ集約によって生まれた、運用管理コストの低減や、より効率的なITリソースの活用といった利点を拡大しつつ、社内向けのサービスとしてIT資源の「プライベートクラウド」化を視野に入れている企業もあることだろう。
システム基盤は変わっても「バックアップ」は変わっていない?
サーバ仮想化技術を取り入れることで、ITコストの削減とITによるビジネスへの貢献を積極的に推進している企業であれば、合わせて検討してほしいのが「バックアップ」環境の再検討だ。
次のグラフは、EMCジャパンが2014年4月に実施した「企業が採用している仮想化環境におけるバックアップ方法」のアンケート結果である。
結果を見ると、サーバ仮想化を導入している企業のうち約36%が、「(主に物理環境向けの)一般のバックアップソフトを使い仮想マシンを個別にバックアップしている」と回答していることが分かる。また、「ストレージの持つレプリケーション機能を利用している」と答えた企業も約18%に達している。
EMCジャパン
吉田慎次氏
この結果について、EMCジャパン、DPA事業本部システムズエンジニアリング部シニアシステムズエンジニアの吉田慎次氏は「サーバ仮想化の活用は進んでいるものの、バックアップ環境については仮想化導入以前と同様の仕組みを、そのまま使い続けている企業が多いことが見て取れます。仮想化環境向けに特化したものや、重複排除といったより高度な機能を持つ製品の導入はまだまだ少ないようです」と話す。
他の項目を見ると、「(VMware vSphereのような)仮想化製品に標準で含まれているバックアップ機能を利用」している企業が約20%、「仮想化環境に特化したバックアップ製品を利用」している企業は16%、「重複排除機能を持つバックアップ・システムを利用している」企業は10%程度に留まっている。
仮想化技術によるサーバ集約を進めることにより、企業が運用すべきシステム全体の構成は、従来のものから大きく変化しているはずだ。ITリソースの活用方法や、運用のプロセスも、それに合わせて変わっている可能性が高い。また近年、ビジネスとITとの関係が不可分になる中で、企業のITシステム上に蓄積されるバックアップすべきデータの総量は爆発的な勢いで増加している。