オープンシステムの基盤を目指すTRIOLE
レガシーといわれているメインフレームからオープンシステムの時代になり、さまざまなベンダーのサーバ、ネットワーク、ストレージを組み合わせて集めてコストパフォーマンスを最大化したシステムを構築できるようになりました。オープン化はITのコストを押し下げ、全体の性能を高めました。しかし、これによりシステムトラブルの解決が困難になったこともたしかです。オープンシステムのやり方では、水平分業的なシステムの組み上げ方をします。この手法にはメリットがありますが、システムインテグレーションによる支援が必要になります。しかし、専業メーカーはこの問題に対する1つのソリューションを出してきませんでした。ベンダーにトラブルの解決を求めても、顧客は自身で過程を管理しなければなりません。ベンダーは自社の製品にしか責任を持ってくれませんから。どのベンダーも自社製品には問題がないというときに、では実際に動かないシステムをどうしたらいいのかとなったとき、垣根を越えた他社製品の話はしてくれないわけです。
企業システムをインフラと業務部分に区分し、インフラ層のインテグレーションの解としてTRIOLEを提唱しています。今までやってきた方向は2つあります。1つはオープンシステムをシンプルにしようということで、これはコンフィギュレーションをテンプレート化して選択できるようにすることで、SIの工数を大幅に削減しています。2つめの取り組みとしては、インフラ層を構築するためのツールにあたるものの整備で、システム管理を円滑にするためのものです。多彩な選択肢を組み合わせて組み上げるオープンシステムで迅速にかつ堅牢、安定的なインフラを構築する手段を提供しようというのがTRIOLEです。われわれはこれを自律・仮想・統合と呼んでいますが、サーバやストレージを集約し、また負荷変動に応じて柔軟にシステム構成を変更できるキャパシティオンデマンドの仕組みや、さらには問題発生時に自動的に回復できるような仕組みもTRIOLEに含まれています。
この2点めの取り組みのひとつとして、2004年11月にIBMと自律型システム技術の標準化に向けたWSDM(Web Service Distributed Management)Event Format仕様の標準化を推進するという発表をOASISの枠組の下で行いました。ログ情報の共通化を進めることで、システム間連携を円滑に進めようというのが主旨です。これは2社で1つのモデルを作り浸透させていこうという取り組みで、時間のかかるプロセスですが、こうした具体的なことを1つひとつやっています。
選択の自由度が高ければ組み合わせの可能性も広がりますが、選択が難しくなることもたしかです。顧客は個々の選択肢を精査したいわけではなく、必要な堅牢性を持つ安定的なシステムを迅速に立ちあげ、業務に活用したいというのが顧客のニーズです。これがインフラ層に対するアプローチで、業務層に存在する問題はさらに複雑です。業務層の問題を解決するキーとなるのはSOA(Service Oriented Architecture)でしょう。これは富士通がこれから本格的に取り組む領域で、業務層をうまく作るためのインフラというのはあると思います。