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ビジネスとシステムの知識を完全分離する先進2社のIT人材配置法 - (page 2)

瀬尾英一郎(月刊ソリューションIT編集部)

2005-04-26 10:00

ユーザー側に必要なのはプロマネのスキル

 このように旭化成では、エンドユーザーとIT担当者のコミュニケーションにおいて、基本的にIT部門から歩み寄るスタンスを採っている。

 だがもちろん、エンドユーザー側から積極的に働きかけてもらわねばならないこともある。従来の「下請け型」のシステム開発ならいざ知らず、現在のシステム導入プロジェクトは、IT担当者とエンドユーザーとの共同作業だ。どちらか一方が主導権を発揮して進めれば良い結果が得られるものではない。発注側の「我々の欲しい物を作っていればよい」、あるいは受注側の「要件通りに作れば、あとはどうなっても業務部門の責任」といった考えでは、昔ながらの部分最適のためのシステム導入しかできず、経営戦略や事業戦略から外れたシステムを構築してしまう恐れがある。

 こうした、強過ぎる現場主導型のプロジェクトに対する懸念や、部分最適を越えて全体最適へ向かおうとする考えは、「ERPパッケージの普及と、数々の成功・失敗体験を見てきた中で熟成されてきた」と井上センター長は話す。

 ERPはそもそも、個別業務担当者よりも経営者に向けたツールだ。経営者の意志決定や全体としての生産性向上のために、個別業務の効率を犠牲にすることさえある。そういった、トップダウン型のシステム導入の考え方で、推進されてきた。

 ERP導入プロジェクトの標準アプローチでは、まず全体の業務プロセスに着目する。事業目的に合致した業務の「To-Beモデル」を具体的に描き、現状とのギャップを分析するのがプロジェクトのスタートだ。

 現場担当者が描いたTo-Beモデルが、プロジェクトの方向性を決める。それ程重要な作業だ。そのためにも業務担当者は、システム的な制約を考えず、自由な発想でモデルを考えた方がよい。

 もちろん、その後のステップでITの限界にぶち当たるかもしれない。だが、発想の段階で制限を設けることは避けるべきだというのだ。

 現場側に求めるものは、上記の業務のプロフェッショナルとしてのスキルともう1つ、プロジェクト・マネジメントのスキルだという。「厳密なプロマネ手法を修得している必要はありませんが、過去に何らかのプロジェクトを経験した人が望ましいです」(同)という。

 システム構築プロジェクトの進め方と、ポイントを見極める勘所は、実際のプロジェクトを経験しなければ身に付かない。それをIT部門が肩代わりしようとしても、なかなか上手くいかない。新たな要件が出された場合に、その変更を取り入れるかどうかの見極めやタイミングは、現場側が調整すべきとの見解だ。

 一方、1人の有能なプロジェクトリーダーがいる必要もないと言う。様々なプロマネのスキルを持った人が集まり、全体としてPMOを構成できるだけのスキルの集積があれば十分と見ている。

 特にビジネスモデリングといった上流での仕様固めや、プロジェクト開始後の変更管理、リスク管理などのスキルは重要だという。

 特に戦略的システムの場合、現場サイドがプロセスや仕様の決定を迫られる状況が多々ある。従来型の「丸投げ型」の開発が頭の中にあると、「なんでこんなことを自分たちがやらなければならないのか?」と、不満に思う担当者もいる。そうした現場担当者のモチベーションを高めながら、作業を遂行させるには、現場サイドでのマネジメント技術がモノを言う。

中立者の存在が客観性の獲得につながる

 現在旭化成では、システム開発部隊を子会社として切り出し、何かシステム化のリクエストがあれば、現場業務部門から子会社に依頼する形を採っている。

 だが、2者間だけで案件を進めるわけではない。必ず旭化成の情報システムセンターが、中立な立場として参画する。

 システムセンターが間に入るのは、客観的な視点を持たせることが目的だ。業務担当者は、自部門のプロセスや業務効率を最優先した業務イメージを描く傾向にある。一方IT担当者も、エンドユーザーのリクエストに応えようとするあまり、該当部門に寄りすぎたシステムを構築してしまう恐れがある。そこでシステムセンターが、企業全体から見た設計の妥当性を検証するわけだ。

 このシステム室にも、ITの専門知識はそれほど必要ではないと言う。これも、ITの制約に引きずられることを懸念しての考えだ。

 社内、さらにグループ全体を見渡すと、お互いに関連し合う複数のプロジェクトが並行に走っている。その中の1つにトラブルが発生した場合に、ITの知識があるとどうしても、原因究明から対策案検討と、個別の対応に走りがちだ。

 システム室の役割は、そのトラブルが全体に及ぼす影響を見極め、全体としての対応を検討することだ。そうした視点を失わないためには、あえてIT技術に目をつむることも、時には必要だという。

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