アプリケーション・サーバ大手の日本BEAシステムズは8月10日、J2EEアプリケーション・サーバの新版「BEA WebLogic Server 9.0J」の販売を開始する。従来版と比べ、システム停止時間を減らす機能を高めた。ライセンス価格に変更はなく、1CPUあたり198万円から。
WebLogicは、米IBMのWebSphereと並ぶ商用EJB(Enterprise Java Beans)コンテナの代表的製品である。2003年4月に従来版のWebLogic Server 8.1Jを出荷してから2年ぶりの新版となる。新版では、ミッション・クリティカルな用途に合わせ、可用性を高めるなど、業務システムの停止時間を減らす機能を重点的に強化した。
システムの停止時間を減らすための機能強化点の具体例は以下の通り。
(1)クラスタリング機能を強化し、WANを経由した異なるクラスタ同士で業務のセッション情報を引き渡すようにした。従来は単一のクラスタを構成するWebLogic同士の間でしかセッション情報のコピーができなかったが、新版では異なるクラスタ間でコピーできるようにした。LANに加え、WAN(通信回線サービス)など遅延の大きいIP網を経由したコピーのため、外部のデータベース管理システム(DBMS)にセッション情報を非同期で格納する機能を実装した。
(2)メッセージ・キューイングの仕組みであるJMS(Java Message Service)の速度と信頼性を高めるため、メッセージを一時的に格納する機構を2段階で持つ独自方式「JMS SAF(Store And Forward)」を実装した。メッセージ・キューを段階的に持つことで、メッセージ転送を依頼する処理を早く開放できるとともに、メッセージの格納と転送がより確実なものになり可用性が高まる。
(3)アプリケーションの新版を本番稼動環境にリリースする際、旧版による動作中の業務アプリケーションを停止することなく新版に切り替えられるようにした。旧版から新版に切り替えるタイミングでは、旧版を用いた業務のセッションを継続させつつ、新規に発生したセッションを新版が処理する。旧版を使ったセッションのすべてが終了してから旧版を削除する運用ができるため、業務を停止する必要がなくなる。
運用管理機能にも手を入れた。WebLogic Serverの各種設定や運用管理、JMX(Java Management Extentions)を経由した稼動状況の監視などを、スクリプト言語(インタープリタ言語)であるJythonから実行可能にした。Jythonはオブジェクト指向スクリプト言語であるPythonのJava版であり、Javaの運用管理用の簡易言語として注目が集まっている。
また、可用性とは直接関係しないが、(5)負荷に応じて起動スレッド数を動的に変更する機能を今回新たに追加した。従来版から、DBMSへのコネクション・プーリングの数は動的に変更していたが、今回新たに、アプリケーション・サーバのスレッドの数を自動的にチューニングする機能を追加した。現在ではまだフロントエンドのウェブサーバからバックエンドのDBMSに至るすべての設定を自律的にチューニングするまでには至っていないが、日本BEAシステムズによれば、世の中の動向としていずれ自律的に動作するようになるとしている。
WebLogic Server 9.0Jでは、Javaアプリケーションの開発で用いられるオープンソースとの親和性にも注力した。米BEA SystemsがApache Software Foundationにソースを寄贈したSOA(サービス指向アーキテクチャ)アプリケーション開発用フレームワーク「Apache Beehive」をそのままの形で同梱するほか、Spring Frameworkなどのオープンソースを正式にサポート対象とした。同社では従来から、開発ツールのWebLogic WorkshopをオープンソースのJava開発ツールであるEclipseのプラグインとして提供していくことなどを明らかにしている。
オープンソースに注力する一方で、EJBコンテナ製品としてのWebLogic Server 9.0Jは、企業情報システムの分野で(JBossなどの)オープンソースのEJBコンテナよりも優れていると同社は主張した。費用対効果の面でも、主に同社のJavaVMであるJRockitの性能ゆえに、他製品よりも少ないハードウェア資源で高い性能を引き出せると強く語った。