SAPは、同社がついにオンデマンドCRM(Customer Relationship Management)分野に参入することに関し、競合他社の製品とはまったくかけ離れたシステムの開発を目標にしていると述べている。だが、一部の業界観測筋からは、SAPがどうやってそれを成し遂げるかについて疑問の声が上がっている。
SAP CEOのHenning Kagermannが4月に、オンデマンドアプリケーションはある種の顧客にとってはメリットよりもデメリットのほうが大きいと発言した際、同社にはオンデマンド市場に参入するつもりがないと考えた者が多かった。同市場は2009年までに、米国内だけでも48億ドル規模に成長すると調査企業IDCは予想している。
ところが7月に入って、Kagermannはこうした推測を覆し、今秋にもオンデマンドCRM製品を市場に投入する予定であることを明らかにした。
SAPは、ウェブベースのビジネスソフトウェアシステムをオンラインで提供し、定額料金を課金するオンデマンド分野へ足を踏み入れることになるが、同社の幹部らはこの動きについて決して同社が「心変わり」したわけではないと述べている。Kagermannの先のコメントは、いわゆる「サービスとしてのソフトウェア」を競合他社とは異なる方法で扱っていきたいという、同社の願望を反映したものだと幹部らは説明している。
「既存のオンデマンドモデルは顧客のニーズに合致していないと発言した後では、われわれが急に態度を変えたように見えるだろう。しかし、だからといって、SAPがより効果的に市場の需要を満たす新しいホスティングモデルを開発しないというわけではない」(同社CRM部門グローバルバイスプレジデントのDarc Dencker-Rasmussen)
SAPでは、他社の既存製品は、全般的に洗練されていなかったり、他のシステムと効率的にデータをやりとりできないといった問題があると考えており、同社ではこれらの問題に自社のオンデマンドアプリケーションが対処できるかどうかを時間をかけて検証しているとDarc Dencker-Rasmussenは説明している。同氏はまた、SAPのオンデマンドCRMが、顧客とのコンタクトの管理や注文入力の域を超える機能を提供し、ビジネスプロセスの問題に深く関わっていくことで、「過剰宣伝」の嫌いがある他社の技術を凌駕するものになると述べている。
「他社のツールの場合、顧客との取り引きやコンタクト状況を管理することはできるが、ビジネスプロセスや製品販売となるとお手上げだ。当社の顧客からも、こうした問題に対するすぐれたソリューションを提供してほしいとの要望が上がっていた。ユーザーはホスティングで実現される幅広い導入/課金体系を求めているが、現在市場に出回っている製品では、こういった基本的なビジネスプロセスに対処できない。だが、わたしたちの製品なら、それができる」(Dencker-Rasmussen)
たとえば、SAPのオンディマンドCRMでは、顧客の発注情報を単に記録するだけでなく、それを在庫管理システムにもリアルタイムに反映できるという。このレベルの機能は、従来のCRMでは標準となっているものだと、Dencker-Rasmussenは説明する。
SAPは、同社のオンディマンドCRMについて、それがどんなものになるのか、あるいはどうやって提供されるのか、さらに価格がいくらになるのかといった具体的な情報を明らかにしていない。それでも、Dencker-Rasmussenはこれらのアプリケーションが、同社の従来型CRMシステムと共通する機能を持つことから、競合他社の製品よりもかなり多様な機能を提供するものになると述べている。また、これらのツールがオンディマンドモデルから従来型アプリケーションへの移行を行う企業を想定して設計されている点も、その特徴の1つになると同氏は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ