KDDI、東京電力、パワードコムの3社は10月13日、KDDIとパワードコムが2006年1月1日付けで合併することに合意したと発表した。KDDIは東京電力の光ファイバ事業も将来的に吸収する考えで、これにより市場首位のNTTに対抗する。
存続会社はKDDIで、KDDIの株式1株に対してパワードコム株0.032株を割り当てる。KDDIは合併に伴い、1月4日付けで18万6376.48株を発行する。合併交付金は支払われない。KDDI株の13日終値で換算した場合、パワードコムの価値は約1274億円となる。なお、KDDIの13日の株価は前日比1000円(0.2%)高の68万4000円となっている。
- 握手を交わす3社の代表者。合併により「NTTに対抗する基盤ができつつある」と自信をみせた
KDDIはパワードコムが保有するアクセス網(ラストワンマイルと呼ばれる電話局と建物の間をつなぐ回線のこと)を手に入れることで、NTTのダークファイバーを利用する必要がなくなるというメリットがある。「NTTの回線利用料は決まっており、企業努力で料金を下げられない。パワードコムや東京電力の回線を使うことで、より低い料金で回線を使える仕組みを作りたい」(KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏)
パワードコムは広域イーサネット市場で約40%とトップシェアを誇る。大企業を中心に約4000社の顧客を持つことも、KDDIには魅力と映ったようだ。パワードコムの業績は2005年3月期で売上高が1805億円、営業利益が6億円、純損失は838億円となっているが、「2004年10月以降は黒字化しており、経営再建は完了している」(パワードコム代表取締役社長兼CEOの中根滋氏)と財務状況が改善していることも合併の要因の1つとなった。
東京電力はパワードコムの株式83.81%を保有しているが、「中長期的に考えた場合、固定通信市場は縮小傾向にある。携帯電話事業を持たず、サービス提供地域も限られることから、今後通信事業が大きく発展する余地は少ないと考えた」(東京電力代表取締役社長の勝俣恒久氏)として、通信事業の整理を検討していたという。両社は1年ほど前から話し合いを進めていたとのことだ。
パワードコムが保有するドリーム・トレイン・インターネットやフュージョン・コミュニケーションズなどの子会社については、合併期日の1月1日までに東京電力もしくは第三者に譲渡される。フュージョンについて勝俣氏は「複数の企業と交渉している」と述べ、売却等を検討していることを明らかにした。
パワードコムには東京電力以外にも複数の電力会社が出資している。これらの電力会社との関係については今後話し合いを進めていくとしているが、「NTTへの対抗という点では一致しており、協調路線でいく」(中根氏)とした。
合併により、パワードコムからKDDIの執行役員が1名就任する予定だ。また、東京電力はKDDIに取締役を1名派遣する計画となっている。なお、中根氏の進退については、現時点で未定としている。
エネルギーと通信を融合した新サービスを提供
KDDIと東京電力は年内をめどに、KDDIのCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)と東京電力の光ファイバ網を統合する。通信サービスの販売主体はKDDIになるという。KDDIは東京電力の設備投資に対して一部資金を負担し、設備の増強を図る考えだ。
将来的に東京電力はFTTH事業を分離し、KDDIとの統合もしくは両社による合弁会社の設立を考えている。具体的な内容については今後詰めていくという。
また、両社はそれぞれの強みを生かし、固定電話と携帯電話だけでなく、エネルギーサービスも統合した新サービス「FMC+E」を展開する方針だ。具体的には、通信を利用した電力管理サービスや、高速電力線通信(PLC)と呼ばれる電力線を利用した通信サービスを検討しているとしている。「NTTにはできないサービスを提供していく」(小野寺氏)
今回の合併により、東京電力のKDDIへの出資比率は1.32%から4.81%に高まり、第5位の株主に躍り出る。3社は合併に向けてKDDI代表取締役執行役員副社長の山本正博氏を中心とする合併準備委員会を設立するとしている。