検索を軸にした情報の「フロー」に注目するウチダスペクトラム - (page 2)

柴田克己(編集部)

2006-04-19 21:29

 「ビジネスロジックによる処理」のフェーズは、前のフェーズで幅広く収集した情報を、事前に設定したさまざまなルールに従って整理する段階である。同じ情報であっても、その情報が持つ意味は、業種や、その情報を必要としている人のビジネス上の役割、企業としての戦略、さらにはその情報の存在する文脈などによって大きく変化する。このフェーズでは、それぞれの企業の必要に応じて、情報の統合と整理を行うことになる。ニーズに合わせたエンジンの「チューニング」を行う点で、ビジネス知識と情報活用に対するノウハウの有無が成否のカギを握るフェーズだ。

 次の「情報発見」は、実際にユーザーが情報に触れるフェーズである。ポピュラーな「キーワードサーチ」だけでなく、前のフェーズで統合整理した情報を、グラフのような形でビジュアライズしたり、提示された情報をドリルダウンして、その内容を分析したりといった機能も、ここで必要になる。

 「定期購読」とは、有効な情報を見つけ出したユーザーが、その情報を探し出したときの方法やキーワードなどを登録しておき、定期的にそれを使った情報発見を行えるようにするための仕組みである。ウチダスペクトラムでは、この「やり方」を「コンテクスト」と呼んでいる。日々、更新されていくインデックスを、同一のコンテクストで繰り返し検索することにより、常に最新かつ有効な情報を素早く探し出すことが可能になるという。

 SMART/InSightにおける「情報共有」の考え方は、単に「役に立つ特定の文書をみんなが見られるようにする」といった従来の定義とは若干異なっている。このフェーズでは「コンテクストの共有」と「コンテンツに対するタグの登録と共有」の2つが重要になるという。

 コンテクストの共有は、定期購読のフェーズで登録した「有用な情報を見つけるためのやり方」を共有するという方法である。この方法のメリットは、「かつて見つけた有効な情報」が時間の経過と共に「古い情報」に変わってしまった場合でも、同じコンテクストを共有している人々は、常に最新の同じ情報を共有できる点にある。美味しい魚を大量に釣ったベテランの釣り人がいるとして、そばにまだ1匹も魚が釣れていない人がいるのであれば、自分が釣った魚を渡すよりも、釣り方のコツや有効なポイントを教えるのが、より意味のある「情報共有」になるという考え方だ。

 コンテンツに対するタグの登録と共有は、エンタープライズタギングとも呼ばれるWeb 2.0的な情報の分類と共有の手法である。

 「SMART/InSightでは、情報の実体に手を加えずに、その情報の利用者が、内容についての“タグ”、つまりメタデータを付加する仕掛けを実装できる。情報の利用者が情報の分類に継続的に参加することによって、市場の変化や企業環境の変化など“情報の意味”を変えてしまうような文脈の変化にも柔軟に対応できる情報分類が可能になるだろうと考えている」(ウチダスペクトラム、SMART/InSight事業推進グループ執行役員の長尾唱氏)

情報発信ツールまでを含むプラットフォームへ

 SMART/InSightの将来像について、町田氏は「情報の共有、有効活用にとどまらず、発信や流通までを視野に入れたプラットフォームへ育てていきたい」とビジョンを語る。

 ナレッジワーカーの仕事の本質は、入手した情報を利用して、新たな情報を生み出すことにある。新しく生み出された情報を発信するためのツールをSMART/InSightの一部として提供することで、さらなる情報のフローが生まれやすくなるというわけだ。

 将来的なビジョンを含むSMART/InSightの概念図(下図参照)を見ると、情報の発信や流通のためのツールとして、イントラブログやSNS、Enterprise Wikiといった名称が並ぶ。イントラブログの内容を、企業内に既に存在している情報のメタデータとして活用していくといった構想もあるという。

 インターネットの世界で鍛えられた、情報発信、流通、共有の仕組みを、企業の情報活用のためのプラットフォームとして定着させようとする試みは、多くの企業、ベンダーによって続けられてきた。SMART/InSightは、検索エンジンの技術を核に、企業にとって本当に価値のある情報フローを生み出すためのチューニングとドライビングの方法論を確立することで、次のステージへと進むことを目指しているようだ。

SMART/InSight概念図 SMART/InSightの概念図。今後は情報の発信を行うツールまでを含めた総合的なソリューションとして発展させたい考えという。

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