現在、企業内のネットワークとして無線LANが多用されるようになっている。イーサネットのようなケーブルの煩わしさがないという利便性を誰もが感じているいるからだ。
そういった状況のため、多くのベンダーが無線LAN市場に参入しつつあるが、その中でもMeru Networksの製品は多くの日本企業で採用されている。同社の社長兼最高経営責任者(CEO)であるIhab Abu-Hakima氏に話を聞いた。
--Meruの製品が日本企業でも大規模に採用されていると聞いています。
そうですね。大阪にあるハイアット・リージェンシー・オーサカでは施設全域を無線LANでカバーしようという計画が進められました。実際に、ハイアット・リージェンシー・オーサカの場合、地上28階、地下2階で約500もの客室を、われわれの「Meru AP200」という無線LANアクセスポイント150台でカバーしています。
他社製品であれば、その2倍はかかるそうですが、「Meru System Director」というソフトウェアが各アクセスポイントのデータ通信のやり取りを制御することで、干渉を回避できるために、アクセスポイントの数を他社製品よりも大幅に少なくすることができています。ハイアット・リージェンシー・オーサカの件では、当初からデータ通信と音声通信を統合させることが狙いでした。われわれの製品はIP電話システムでの利用も前提とした機能が盛り込まれています。従業員の方々は、無線のIP電話端末やPDAに搭載されるソフトフォンで効率のいい作業ができていると聞いています。
--大阪ガスが6000台もの無線IP電話機を導入するとして注目を集めましたが。
大阪ガスはわれわれにとって世界最大の顧客になっています。というのは49拠点すべてにわれわれのアクセスポイント「Meru AP208」が採用されています。アクセスポイントに加えて、コントローラも採用されています。
コントローラとは、先ほど話したSystem Directorを搭載したハードウェアであり、リソース管理やQoSなどを管理します。大阪ガスで利用されているコントローラは「Meru MC1000」「Meru MC1100」になります。そして、同社のケースでは、携帯できるIP電話端末としてFOMAのデュアルフォン端末「N900iL」が採用されています。
--そういったMeruの優位性はどんなところにあるのですか。
われわれの無線LAN技術が“第4世代”といわれていることが、われわれの優位性をおそらく象徴していると思います。
第1世代とは米電気電子学会(IEEE)の無線LANの標準規格である802.11が登場以前を指し、第2世代とは、2000〜2002年のころに802.11が登場以後で無線LANの機器はスタンドアローン、つまり管理がされていない状況にあることを指しています。
第3世代とは2003〜2004年のころに、無線LANの機器を1カ所で集中的に管理するという技術が登場してきたことを指します。無線LANのエッジスイッチやコントローラといったもので複数のアクセスポイントを管理するというものです。そして第4世代とは、2005年以降になり、無線LANのトラフィックを最適化するという技術を指しています。具体的には、無線LANでのQoS、アクセスポイント間を移動する時のゼロハンドオフという技術があります。無線LANでのQoSをサポートする技術は他社では真似のできない技術になっています。
--最近では、企業はもちろん病院や大学でも無線LANを多用するようになっています。
たとえば大学の講堂では、数十人あるいは数百人といった学生がノートPCで無線LANにアクセスしています。従来の技術では、アクセスポイントを増やすことで対応せざるをえませんでした。しかし、この場合では、通信状態が悪くなるという問題がありました。
そこでわれわれは、「Meru Radio Switch」という製品で問題を解決しています。この製品は高い帯域幅でのアクセスを可能にするとともに、無指向性アンテナを用いることで問題をクリアしました。先ほど話した大学の講堂のようなケース、われわれはそういった環境をハイデンシティと呼んでいますが、Radio Switchは、そうしたハイデンシティの環境において、電波の密度を高めることで、問題をクリアしています。Radio Switchは大学のほかにも病院、あるいは大企業の会議室、もしくは製造業での工場といった場所でも対応することができます。
--Meru Networksは2005年3月に日本に支社を設置しています。まだそれほど時間はたっていませんが、日本という市場をどのように見ていますか。
無線LANという市場で見る限り、米国あるいはほかの国と比べて1〜1.5年進んでいるのではないでしょうか。たとえばFMC(固定通信と無線通信の融合)という点でも、日本は発展を続けています。無線LANとのデュアルの携帯電話がそれを象徴しているでしょう。それだけにわれわれは、この日本という市場にチャレンジすべきだと思っています。
また日本のユーザーは“品質”にとても厳しいというところを見ても、日本はチャレンジする意味の大きい市場です。実際に、われわれの大手戦略パートナーは、品質テストの時に、品質面の指摘をしてくれています。