より大規模システム向けの機能が強化された「Sybase ASE 15」

山下竜大(編集部)

2006-08-09 19:03

 Sybaseがネバダ州ラスベガスで開催している「Sybase TechWave 2006」2日目の基調講演では、同社の主力製品のひとつであるデータベース管理システム「Sybase Adaptive Server Enterprise 15(ASE 15)」の新機能と今後の強化ポイントが紹介されている。

 ASE 15の新機能は、ギガバイトからテラバイトまでの大規模データベース(VLDB:Very Large DataBase)がサポートされたこと、アプリケーションを変更することなく対応可能なデータセキュリティや意志決定支援のための効率的なトランザクション処理の実現、エンタープライズ向けシステム構築に必要なさまざまな機能が強化されたことの大きく3つ。

 また、トランザクション性能やXMLおよび非構造化データの管理機能の強化、TCO(総保有コスト)の削減などのUnwired Enterpriseをサポートする機能などが強化されている。

SybaseのIrfan Khan氏 Sybase ワールドワイドエバンジェリズム担当ディレクター、Irfan Khan氏。

 Sybaseのワールドワイドエバンジェリズム担当ディレクターであるIrfan Khan氏は、「ASE 15は、すでに数百サイトのインストールベースを持ち、トップ100企業の70%が導入を決定している。中でもASEユーザーの25%が最新バージョンであるASE 15を採用しているのが特長のひとつ。ユーザー企業がASE 15を採用した最大の理由は、同製品が高い実績とベンチマークを実現しているためだ」と話す。

 これによりSybaseでは、2006年第2四半期に新たに232の新規顧客を獲得、34%成長のうちの4分の1がASEからの売り上げとなっている。

 具体的なユーザー事例としてKhan氏は、JP Morgan Chaseを紹介した。同社は、エンジニアリングプロジェクトにSybase製品を採用。認証とベストプラクティスにASE 15が採用されている。また、Sybaseは、JP Morgan Chaseの戦略的マイグレーションプログラムにも参加している。

 JP Morgan Chaseでは、初期導入されていたアプリケーションのマイグレーションでASE 15を採用。特定業務で使用されるレポーティングサーバをASE 11.9.2からASE 15にマイグレーションしたほか、Replication Server 12.1が12.6へマイグレーションされている。

 アプリケーションの特長としては、最大3000ユーザー、平均130同時接続ユーザーが、500GBのオンラインデータを使用。オンラインデータには、36GBの主要レポーティングテーブルが含まれており、22の異なる製作物サーバからなるレポーティングサーバをReplication Serverを使用してデータ統合した。また、複雑なクエリ、大規模テーブル、多くのジョイン、使用頻度の高いテンポラリデータベースの活用なども特長となっている。

 Khan氏は、「JP Morgan Chaseでは、ASE 15の導入により、クエリ性能が大幅に向上している。たとえば、監査のための1週間のストックデータの抜粋ができるようになったほか、監査のための1週間の現金データの抜粋が可能。パフォーマンスも、ASE 11.9.2からASE 15へのマイグレーションで、最大85倍に高速化された」と話している。

 ASE 15の今後の改善点について同氏は、シェアドディスククラスタリングやキャッシングインフラの搭載、運用管理の強化、XML機能の強化、セキュリティ強化、インメモリ機能の搭載、リソースの仮想化などを挙げている。

クラスタのデモ 次のリリースで搭載される機能として、プロセスが稼働しているノードが停止すると稼働しているほかのノードに処理が高速に移行されるシェアドディスククラスタリングのデモが紹介された。

 シェアドディスククラスタリングでは、4ノードのクラスタシステムを構築し、ノード1で稼働していたプロセスが、ノード1を停止させるとノード2に、ノード2を停止させるとノード3に、ノード1が再起動するとノード1に高速に切り替わるデモが紹介された。

 「ユーザー企業は、より一層の高可用性の要求や自動接続のフェイルオーバーの実現、マルチプルフェイルオーバーなどの機能を求めている。これらの要求はクラスタアーキテクチャの共通機能として実現される計画だ。これにより、ダイナミックな追加/移動プロセシング能力を実現し、劇的なTCOの削減を目指している」(Khan氏)

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