童夢は10月30日、ダッソー・システムズの「CATIAコンポジットデザイン」を採用したことを発表した。
レーシングカー開発には、短期開発、少量生産という大きな特色がある。開発期間は7カ月程度で、生産台数は1台から。ほとんどのレーシングカーは、同じものを10台以上作ることはない。さらに、試作も行わない。1台目から完成品としてレースを戦うことになる。
そのために童夢は、小回りのきく組織を整え、さまざまな作業を一貫して行うためのツールとして日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とダッソーが共同で提供するPLMソリューションを採用。レーシングカー設計の合理化などを推進してきた。
童夢では、2001年4月にCATIA V5を導入。短期開発と製品品質の向上を目指し、強度解析や流体解析などのシミュレーションからCAMによる試作、検査、組立にいたる開発作業を支えるシステムとして活用している。
CATIA V5を導入するまでは、設計者とCAE担当の間にコミュニケーションミスが発生することもあった。CATIA V5によって基礎的な解析作業を設計者側で行えるようにしたことで、解析を設計者が考えていたポイントで行えるようになり、こうしたミスを減らすことが可能になった。
また、問題の発見、解決を前倒しすることも可能になった。製造工程の問題を減らして開発期間を短縮し、その時価を実験やCAEに割くことで、より高性能な製品を開発しようという取り組みを続けている。
今回採用したCATIAコンポジットデザインは、複合材の設計から製造までをカバーするソリューション。設計段階からの要件を詳細に積層定義した3D設計データを作成し、設計で発生した変更をそのまま製造準備に反映することが可能だ。
なお、複合材は軽量で耐久性が高く、腐食しにくいという特色がある。このため、レーシングカーの8割はこの複合材部品からできている。童夢の取締役開発部長、奥明栄氏は、「規制がなければ複合材の使用範囲はさらに拡大するはず」と話す。
ただ、複合材は高額だ。製品計上や材質、繊維の方向、積層など、扱う情報量も多い。童夢では、設計と製造プロセスを合理化することで、部品価格が製品価格を過度に押し上げるのを抑えることも新ソリューションに期待している。