万川集海 第1回:謎の円盤創世記--ディスク誕生50周年を迎えて

佐野正和(日本IBM) 2007年01月18日 08時00分

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謎の円盤、地上に降り立つ

 まだ何も存在しなかった時代、世界は暗黒の闇に覆われていた。そこで神は叫ばれた。「ひかりあれ!」と。すると暗黒の世界に光が生まれ、続いて山や川、森、海などが次々に現われ、この世界は作り出されていった。時は流れ、20世紀の半ば、神は再び叫ばれた。「ディスクあれ!」。数々の困難を乗り越えた技術者たちは神の祝福を得たのである。1956年9月、米国カリフォルニア州サンノゼという町にあるIBMの研究所で、世界最初のディスク装置が開発された。

 ディスク装置はパソコンに代表されるコンピュータはもとより、今では家庭用の録画機にも使われている装置であり、21世紀初頭の日本ではある程度広く一般に認識されている装置の1つだ。世に送り出された世界初のディスク装置は家庭用大型冷蔵庫を2台並べたような大きさだったが、こんなに大きいにもかかわらず記録できるデータ量は今から思えばたった5Mバイトであった。5Mバイトという容量は、コンピュータに日頃なじんでいない方にはピンと来ない大きさだろう。これはデジタルカメラでそれなりに高画質の写真を撮ると、たった1枚分しか入らない容量である。最初は家庭用大型冷蔵庫2台分の大きさでも1枚しか収容できなかったものが、皆さんの手のひらに乗るデジタルカメラには何百枚もの写真が保管できることを考えると、技術の進歩とは実に立派なものである。

車のタイヤを皿回し

ディスク装置 世界最初のディスク装置(写真提供:日本IBM)

 世界最初のディスク装置がこんなにも大きくなってしまった理由は幾つかある。ディスク装置は鉄で出来た円盤に情報を記録するのだが、当時はこの磁気記録の技術がまだそれほど進歩していなかった。磁気記録という信号方式は音楽用のテープレコーダーやMD(ミニディスク)、家庭用VTRにも応用されている技術なので、皆さんのご家庭でも活躍している大事な技術だ。今では非常に小さな面積で情報を記録できる技術があるので、音楽用のMDなどは手のひらに載るサイズでかなり小さい。だが当時は記録用のエリアが小さすぎるとデータが読み書きできなかったのだ。

 したがってより多くのデータを記録するために円盤を大きくし、記録できる面積を増やそうとした。円盤の直径はおよそ60cmだったので、乗用車のタイヤぐらいの大きさの円い鉄板をイメージしていただければ良いだろう。これを51枚、円盤どうしの間は少々間隔を空けながら縦にズラっと重ねて並べ、円の中心に1本の鉄棒を差込み、差し込んだ鉄棒をモーターで回転させたのである。回転速度は1分間に1200回転。音楽用のレコードプレーヤーは1分間に33回もしくは45回程度しか回っていなかったことを考えると、51枚の鉄板を1分間に1200回もグルングルン回すモーターは、かなりの大きさが必要だったことは容易に想像できる。

波間に浮かぶ紙に書かれた文字を読むには

 最近ではほとんど見かけなくなった音楽用のレコードプレーヤーは、レコード盤の上に針を落として音を再生するが、レコード盤を何度もプレーヤーにかけると針でレコード盤の溝が削られてしまい、音が悪くなってしまったものである。若い世代の方は音楽レコードなるものを見たことが無いため、今ひとつピンとこないかもしれないが、それなりの年齢の方であればウンウンと納得して下さるに違いない。

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