エンドユーザーが作ったデータの移行方法
サーバを含め、社内システムのバックエンドの移行作業は、稼働率の少ない連休中などに実施するのがベターというのが定石だ。ところが、デスクトップを移行する場合には、平日に作業を行うほうが都合が良いケースもある。
せっかく事前に準備期間をとって、デスクトップに保存されている業務に必要なデータはサーバへ待避するように通達を出したとしても、すべての社員が従順に従ってくれるとは限らない。
場合によっては、週末に作りかけの書類を開いたまま、デスクトップに画面ロックだけをかけて連休に入ってしまうケースなどもあるかもしれない。その度に携帯電話で確認をとり、作業を保留していたのでは、移行作業は遅々として進まない。つまり、「確実に」移行を完了させるためには、そのPCを利用している社員が目の前にいるタイミングを狙ったほうが手っ取り早い場合も多いのだ。
もしも、新たなハードウェアを導入するのなら、少々コストと手間はかかるが、古いPCと新しいPCを併用する期間を設ければ、業務への支障は減らせるだろう。同じハードウェアを使い、OSやソフトウェアだけを入れ替える場合は、BDD2007(後述)を使用するなどして、なるべく業務が中断する時間を短縮することを考えておきたい。
なお、Vistaは、企業ユーザーが製品評価をしやすいように、ベータ版、製品候補版(RC)と積極的に開発バージョンを公開してきた。これらを利用して、移行のノウハウを蓄積してきた管理者も多いだろう。技術的なノウハウに自信があり、社内のコンセンサスもとれているのなら、移行の最初のチャンスは2007年2月中である。
こうした、システムの大規模な移行は、業種によっても異なるが、商売の閑散期に行われることが多い。俗に「ニッパチ」と言われる2月、8月だ。これ以外の時期に、システム変更や新しいデスクトップ導入などを行うと、社員が慣れないうちに繁忙期を迎えてしまう。もちろん、新環境にまつわる不具合などが出てしまっては元も子もない。
避けたい移行タイミング
Vistaの出荷直後であれば、実績をあげようとしているSI業者が積極的にフォローしてくれるという事情も、実際には、ある。
企業のデスクトップOSについては、発売直後に様子見の期間があった後、ある時期を境にして、一斉に移行が始まるという傾向がある。なぜか、周囲から移行完了の声が聞こえてくると、充分な準備もなしに、移行を進めてしまう組織も多いようだ。
「他社がやっているから」という理由で、なんとなく移行をはじめるようなことがあれば、そのころ多忙であろうSI業者は、表面上は丁寧に応対していたとしても、あなたの会社を「その他大勢」のうちの1社としてしか扱ってくれないことになる(本当はそうあってはいけないのだが)。
Windows 95/98/Meからの移行時のように、マイクロソフトの製品サポートが終了するタイミングまで、「ただなんとなく」ズルズルと検討を遅らせてしまうのは最悪だ。デスクトップ環境の移行が、社員の生産性に対して与える一時的な負の影響は避けられない。同業他社が導入済みのVistaの機能を使いこなし、以前よりも業務効率を向上させた時期になって、なし崩しに新たな環境へと移行すれば、大幅に競争力を低下させてしまうことになる。