Microsoftが市場に参入すると、他の企業は心配しはじめる--そしてそれには十分な理由がある。過去を振り返ってみても、Microsoftがいったんあるテクノロジに狙いを定めると、たとえ既存企業が揺るぎない地位を築いていてもその市場を支配するようになる場合が多いのである。
一時は市場でトップの座にあったのにMicrosoft製品にその座を追われた例として、ワープロソフトでは「Microsoft Word」に取って代わられた「WordPerfect」、ウェブブラウザでは「Internet Explorer」に取って代わられた「Netscape」、サーバソフトウェアでは「Windows Server」に取って代わられた「NetWare」を挙げることができる。そして最近、ウイルス対策ソフトウェアやマルウェア対策ソフトウェアのベンダーは、Microsoftが消費者向けウイルス対策ソリューション「Windows Live OneCare」や、スパイウェア対策ソフトウェア「Windows Defender」、さらにはSybari Antigenの買収成果である企業向け製品として「Forefront」の開発に取り組む様子を、不安を抱きながら見守っている。
そしてMicrosoftがNortelとの提携を発表し、今年に入って両社のテクノロジを統合した製品ロードマップを発表したときも、VoIPベンダーは、緊張しながら様子を見守るしかなかった(両社が発表した製品ロードマップについてはこちらを参照されたい)。Microsoftはこの提携に先立ち、CiscoやAlcatel、Avaya、Mitelなどの複数のVoIP企業と提携関係を結んでいる。こういった提携は、VoIP企業のIP PBX機器と、Microsoftの「Live Communications Server(LCS)」や「Office Communicator」ソフトウェアをうまく連携させることを目的としたものである。
LCSとCommunicatorはエンタープライズレベルのサーバアプリケーションであるが、Microsoftは2005年8月に、PC用VoIPアプリケーションの開発企業Teleoを買収している。この買収に注目すれば、VoIPに対するMicrosoftの長期的な計画についてあれこれ思いを巡らす出発点になるかもしれない。また、ソフトフォンの提供社として人気の高いSkypeだけではなく、VonageやLingo、Packet8、SunRocketといった消費者向けVoIPベンダーが、Microsoftによって市場から追い出されるのではないかと心配する必要があるかどうかもいろいろと考えたくなるかもしれない。
エンタープライズ市場
ここではMicrosoftが既に投入している企業向けのVoIP製品を紹介しよう。音声は、同社のユニファイドコミュニケーションに対する今後の取り組みにおいて重要な要素のようである。「Office Communications Server 2007(OCS)」と呼ばれる次世代の「Live Communications Server」は、中央サーバとして機能し、VoIPを利用した音声会議やビデオ会議、SIPベースのインスタントメッセージング、アプリケーション共有、電話を掛けて電子メールを読み上げさせることなどを可能にする音声と電子メールの統合などを実現する。
OCSを利用すれば、Office Communicatorクライアントが電話を掛けたり受けたりできるようになる。また、WordやExcelといったMicrosoft Officeプログラムとの統合が図られている。また、Office Communicator 2007クライアントはOCSサーバを通じて既存のIP PBXに接続することもできる。さらに、「Exchange 2007」とともに利用すれば、ボイスメール(通常のPBXからのものと、IP PBXからのものの双方)をOutlookの受信トレイで参照できる。Office CommunicatorとOffice Communications Serverの詳細については、Microsoftのウェブサイトを参照されたい。