NASDAQも採用進めるリアルタイムJava

杉山貴章(オングス) 2007年07月11日 19時26分

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 この特集では組み込みではないエンタープライズ分野でのリアルタイムの今をお伝えする。第1回目はJavaについてだ。

 1995年に初めてJavaが世に姿を表してからすでに12年が経過した。すでに言語としては安定期に入っており、エンドユーザから見て何かが大きく変わるということは少なくなってきたように思われる。そんな中で今後大きな変化が見込まれる分野のひとつにエンタープライズ・リアルタイム・システムを挙げることができる。リアルタイムといえば元々は組み込み分野が主なターゲットであったが、近年エンタープライズ・システムでもリアルタイム性を要求されるケースが増えてきており、リアルタイムJava仕様が再び注目を浴び始めている。5月に行われたJavaOneでは、NASDAQがオンライン・トレードのシステムにおいてリアルタイムJavaへのマイグレーションを始めていると発表して衝撃をもたらした。

 今回、Sun Microsystemsのソフトウェア・ビジネス総括本部に勤める山口浩氏にインタビューする機会を得、リアルタイムJavaが現在どういう状況にあり、最終的にSunとしてどういう形でこれを活用したいと考えているかなどを話していただいた。

――まず、Javaによるリアルタイム・システム開発のこれまでの経緯と、エンタープライズ分野でそれを活用するにあたってSunがどういう戦略を考えているか教えてください。

 まずJavaによるリアルタイムシステムについて議論され始めたのが1997年頃のことです。その頃はリアルタイム系といったら組み込み分野が主だったわけですが、C言語やアセンブラによる開発はどこかで行き詰まるという指摘から、Javaを使えないかといったことを考えるようになりました。当時のJavaは組み込みに使えるほど性能がよいわけではなかったのですが、この議論を積極的に推し進めたGreg Bollella(当時IBMで働いており、後にSunに移籍)らは性能の問題はいずれ解決できると考えていました。

 実際の仕様はJSR 1(RTSJ: Real-time Specification for Java)として策定されて、最初にリリースされたのが2002年です。ただそのときは組み込みLinuxを対象としていて、Solarisで動かすというようなことは考えていませんでした。それから2003年頃にGreg BollellaがSun Labで始めたのがProject Mackinac(プロジェクト・マキノ)で、これはSolarisのような汎用OSの上で通常のJavaプログラムとリアルタイムのJavaプログラムを同時に動かそうというものでした。

 リアルタイム性が要求されるアプリケーションとはいえ、全てをリアルタイムJavaで記述するのは困難で、部分的にはリアルタイムでなくてもいいところがあるわけです。Javaならばリアルタイム・プログラムとそうでないプログラムを全て共通のプラットフォーム上でスマートに記述することができます。

 一方でSolarisですが、これはバージョン7か8の頃にリアルタイムOSとして使用できるように内部の仕組みを作り替えました。具体的にはリアルタイムクラスというのが用意されていて、これはシステムクラスよりも高いプライオリティで動作します。通常はリアルタイムで動くスレッドというのは無いのですが、リアルタイムOSとして使いたい場合にはこの部分のプライオリティを利用すれば、システムに邪魔されないスレッドを実行することができるわけです。

 Project Mackinacではこれを利用して通常のJavaプログラムとリアルタイムのJavaプログラムの共存を実現しようとしました。実際にこの実装がSun Java Real-Time System(Java RTS)としてリリースされたのが2005年です。Greg BollellaはProject Mackinacを進めるにあたって「リアルタイムについては我々に任せなさい。あなた方はその上で何を書けばいいかを考えなさい」というようなことを言っています。つまりリアルタイム性についてはRTSで保証するから、開発者はその上で自分の目的とするJavaアプリケーションを書けばいいということです。

――それはRTSJとJava SEを同時に使ってもいいということでしょうか。

 RTSJというのはJava SEとは独立した仕様ですが、SEと同居しては駄目というわけでもないんですね。Project MackinacではSEの上にリアルタイムJavaを載せることで、両者を同時に利用しても矛盾が生じないようにしました。これによって、通常の部分はJava SEのAPIを使って書けば通常のスレッドとして動作し、リアルタイム性が要求される部分はRTSJを使って書けばリアルタイム・スレッドとして動作するというようになっています。

 このようなことが可能になると、エンタープライズ向けの大規模なアプリケーションでもリアルタイムクラスを利用できるようになるわけです。逆にリアルタイムクラスのみしか使えない環境では、エンタープライズ・アプリケーションを作るのは非常に大変です。現在リアルタイムタイムJavaがエンタープライズ分野で注目されている理由はこういう点にあると思います。

 2年前にリリースされたSun Java Real-Time System 1.0はJ2SE 1.4ベースでプラットフォームもSPRAC版のSolarisのみでした。現在は2.0の開発が進められていて、こちらはJ2SE 5.0ベースで、SPARC版とx86版の両方のSolaris 10をサポートします。RTSJはバージョン1.0.2準拠となります。またリアルタイムGCも強化されています。2.0はもう間もなく製品版(GA)がリリースされる予定です。

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