――エンタープライズでのリアルタイムJavaの利用については今年のJavaOneでもNASDAQがこれから導入していくという話がありましたが、Sunとしては具体的にどういた分野をターゲットとして考えていますか。
一番大きいのが軍関係だと思います。航空機の管制制御や監視システムなどですね。1ミリ秒以内といったオーダーでのレスポンスが必要になる場面が非常に多いので、それに耐えられる環境を提供できるかというのがポイントになります。
次はやはりNASDAQのような金融系です。これは1ミリ秒というほどシビアではないと思うのですが、例えば10ミリ秒や100ミリ秒といったオーダーでの処理が必要になります。JavaOneの発表ではNASDAQのトランザクションは1秒間に15万件という話でしたが、これを正しく処理するにはリアルタイムシステムが必須ですね。
ウェブサービス関係では、優先的に処理しなければならないリクエストなどがある場合にリアルタイムJavaが有効なのではないかと考えています。通常のJavaはスループット優先で実装されているわけですが、リアルタイムの場合は応答性能やプライオリティが優先されるので、これを活かせる場面があると思います。
他には、センサーのように入力に対する応答時間の保証が必要なケースというのは現在は完全に組み込み分野に限定されているわけですが、これをエンタープライズまで拡張するといったことが考えられます。Gregは道路の混雑具合に応じて信号のタイミングを変えるようなトラフィック制御にもチャレンジしたいと言っています。この辺りはまだ模索中ですが、いろいろ検討する価値はあると思います。
――イベントドリブンアーキテクチャ(EDA)などは最近他社からも発表されていますね。
そうですね。ただイベントドリブンと言ったときに、どの程度のレイテンシーを許容するかという問題があります。通常のエンタープライズ系のシステムだと未だにバッチで処理しているような部分もあるのであまり厳しくはないわけですが、リアルタイムシステムを応用すればこれをもっと高いレベルまでサポートできるようになります。
ただし、リアルタイム処理を考えたときにハードウェアレベルでしか解決できない分野もあります。ナノ秒レベルの処理を専用チップで実現しているような部分ですね。こういう分野はコードが入り込む余地がないのターゲットにはなりません。逆にそうでない分野、汎用CPUで処理できる分野については、リアルタイムJavaが入り込む余地が十分にあると考えています。
――SunのRTSがサポートしているのは現在Solarisのみですが、Linuxなどのサポートは考えていますか。
実はSunとしてはそれほどOSやハードウェアにはこだわっていないんですね。ある程度の部分はすでに汎用的に書かれているので、OSやハードウェアに依存する部分というのは最小限に抑えられています。なので要望が多ければSolaris以外のOSのサポートも進める可能性はあります。
Solarisはスケジューリングなどの面で最初からリアルタイムをサポートしているのでやり易い部分があったのですが、汎用のVMに近いものを使えるようにしたいという考えもあります。これからは組み込み向けのOSも大規模化して汎用OSに近づいてくるはずですから、ターゲットは広がっていくと思います。