導入テクノロジによって左右されるビジネス価値
テクノロジの種別とはほとんど関係なく、我々が調査したIT部門の意思決定者が口を揃えていたのは、Web2.0テクノロジを導入する最大の目的はビジネス効率だという見解である(注5)。しかし、動機の面ではこのように各社一致しているものの、ビジネス価値の問題となると、すべてのWeb2.0テクノロジが平等に評価されているわけではなかった。この調査で得た回答結果は次のとおりである。
・ビジネス価値の評価平均値のトップはRSS
各種のWeb2.0テクノロジ中、最も高く評価されていたのはRSSで、回答者のおよそ4分の1(23%)が顕著なビジネス価値ありと認めている(図1-1参照)。また、最も多かったのはRSSを企業内のコミュニケーションやコンテンツ収集の手段にしているという回答で、社外へのマーケティング手段にしているという回答は全体の3分の1にとどまった。
RSSを導入すると、その情報配信メカニズムにより、他の多数のWeb2.0テクノロジの運用が効率化される。また、RSSのパブリッシュ/サブスクライブ(発行/購読)機能と協調フィルタリング機能によって、コンテンツの適合性と適時性が向上し、ビジネス価値も高まる。
・ブログサービスへの評価はWeb 2.0テクノロジ群の最下位
意外にも、一般消費者の間で最も普及しているWeb2.0テクノロジのひとつであるブログサービスは、ビジネスの現場を席巻するほどのものではなかった。ブログの導入で顕著なビジネス価値が生まれたという回答は、わずか11%にすぎなかったのである(注6)。
ただし、回答者のおよそ半数はまずまずのビジネス価値が得られたと評価し、ブログの導入によって良好な成果はあったが、望ましい変化をもたらすほどではないとコメントしている。
このような結果には、ブログの用途や利用方法の誤りに起因する部分もあるとForrester Researchでは分析している。たとえば、多くのビジネスユーザーにとって、ブログはいまだに個人的な日記という認識であるし、一部の企業では、ブログは既存のコンテンツを公開する手段にすぎないため、その効果を弱めてしまっているからである。
・インスタントメッセンジャ(IM)の価値に匹敵すると見なされたWeb2.0テクノロジは皆無
先に消費者に定着してからビジネスの世界に持ち込まれる系統のテクノロジの中でも、典型的な一例がIMであり、最も新しいのがWeb2.0のツールおよびテクノロジである。これまでのところ、調査対象としたWeb2.0テクノロジに関する企業側の評価は、IMに関する評価をはるかに下回っている。
回答者の37%がIMから顕著なビジネス価値を得ていると評価している一方、5種類のWeb2.0テクノロジについて同じ評価を下した回答者数の割合は、平均すると16%にすぎない。