ROIやTCOでビジネスアプリと同等に評価されるWeb2.0テクノロジ--フォレスター調査より - (page 5)

G. Oliver Young(Forrester Research)

2007-08-14 12:00

望ましい対策:ビジネス価値について企業の経営陣が抱いている疑問に配慮する

 ビジネス上の価値を予測し、その根拠を示すことは、営業プロセスの中でも重要なステップのひとつだ。ところが、多くのテクノロジマーケッターは、契約を締結すればビジネス価値の実証作業は終わりだと思っている。

 もちろん、たとえば企業がWikiを導入し、いったん運用を開始してしまえば、それを完全に廃止するようなことはまずあり得ない。しかし、ビジネス価値の評価と把握をおろそかにしていると、より低コストのソリューションに取って代わられる隙を作ってしまう。

 たとえば、Microsoft SharePointのようなソリューションがあり、そこではWikiは小さいコンポーネントのひとつにすぎなくなってしまう。したがって、テクノロジマーケッターは長期にわたってビジネス価値を提示できるようにする必要がある。そのために、ぜひ次のような対策を取ることをお勧めしたい。

・より簡便な方法でビジネス価値を把握するよう顧客に提案する

 従業員生産性および満足度調査は、ROI、TCO、IRRなどの方法よりもはるかに簡単に実行でき、しかもWeb2.0テクノロジにとって有利な評価が見込まれる。ただし、このタイプの評価方法を使うには何らかの見通しが必要だ。

 テクノロジマーケッターは、導入前に従業員に対する調査を行うことを顧客に推奨する必要がある。そうでないと、有効な感想を追跡することができなくなるだろう。実際には、Forrester Researchが調査した意思決定者のうち、現在ROIその他の評価基準を用いている企業の半数以上が、すでに従業員の生産性調査を実施している。

・ビジネス価値について現実的な予測を立てる

 自社のテクノロジに対する興味を引き、熱意を示すのは素晴らしいことだが、テクノロジマーケッターは現実的なビジネス価値を予測する必要がある。

 たとえば、Wikiソリューションで組織のコラボレーション上の諸問題をすべて解決できるわけではないはずだ。Wikiを導入したとしても、従業員が互いに協働する意欲は欠かせない。また、ほとんどすべてのWeb2.0テクノロジは、時間が経過すればするほどそれを利用し始める従業員が増え、それによって価値が増大する性質のものだ。

 したがって、顧客がテクノロジの運用を開始した当初、まったく変化のきざしが見えない場合、テクノロジマーケッターは顧客にこの特性を見越してもらえるようにする必要がある。Forrester Researchが調査したWeb2.0プロジェクトのリーダーの大半は、実際にビジネス上の成果が現れるまでには6〜9カ月かかったと答えている。

・導入したテクノロジから最大限のビジネス価値を得るための利用方法を顧客が推進できるよう支援する

 ブログサービスに関する評価結果(ブログ導入によって顕著なビジネス価値が得られたという回答はほとんどなかった)を検討すると、重要な事柄がわかる。それは、このように低い評価が出た原因の一端は、少なくとも各企業におけるソリューションの導入/管理状況にある、という点を理解することだ。

 ブログ管理者が既存のコンテンツをブログサービスで公開しているだけでは、変化をもたらすビジネス価値は得られない。しかし、ブログを利用して顧客や従業員、パートナーを新たに結び合わせ、動的な対話が行われるようにすれば、必ず変化が現れる。

 テクノロジマーケッターは、各テクノロジに適した最大限の価値の得られる導入戦略を展開できるよう、顧客をリードする必要がある。また、実際に成果を上げている導入事例(成果が見込まれる仮説でもよい)を顧客に示すことも重要だ。

・価値の評価を敬遠しない--顧客から要望がなくとも、価値の評価を回避してはならない。

 たとえ顧客側が価値の評価を重視していなくても、テクノロジマーケッターはこの作業に着手する必要がある。前向きな取り組みは、顧客に成果をもたらそうと尽力する姿勢を示すだけでなく、後で顧客がWeb2.0テクノロジの導入価値を重視し始めたときに必ず役に立つ。さらに、顧客には注目されていないが効果的な価値評価基準について、適切な準備作業を完了できるはずだ。

・ステークホルダー本位の価値評価/調査報告アプローチを採用する

 最近、Forrester Researchが「フォーチュン500社」にリストアップされている企業の法務担当役員と、同社法務部門のブログ導入プロジェクトについて話した際、従業員の使用率を尋ねてみたところ次のようなコメントが返ってきた。

 「ブログ利用者が1人もいないとしても、それを法律問題という見地で考えるなら、結構なことだと私は思います」

 弁護士のジョークはさておき、このコメントはテクノロジマーケッターに何が求められるかを如実に物語っている。つまり、各顧客の業務分野に応じた評価基準に焦点を当て、ステークホルダー(利害関係者)本位のアプローチを採用することが重要なのである(注8)。

 CIOは、セキュリティを重視し、最高マーケティング責任者(CMO)は顧客の成約率に注目し、研究開発部門の責任者はチームのコラボレーション効率を第一に考える。各分野に最適な価値評価基準を使ってアピールできるテクノロジマーケッターこそが、成功を収めるのである。

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