SOAのさらにその先--BEAの野心的プロジェクトGENESISとは? - (page 2)

大野晋一(編集部)

2007-09-18 08:00

 まずは「GENESISはSOA 360°を拡張したもの。しかし、SOAだけではない。SOAやWeb 2.0、BPMなど全てを統合するための基盤をつくるプロジェクトだ」(BEAバイスプレジデント兼チーフアーキテクトのPaul Patrick氏)というGENESISの技術的なカバレッジがある。「SOAは問題の一面でしかない。BPMやWeb 2.0を組み合わせてはじめてエンタープライズコンピューティングの問題を解決できる」(BEAエグゼクティブバイスプレジデント兼CTOのRob Levy氏)。

 では、GENESISが解決しようとしている問題は何かといえば、Alfred Chuang CEOがよく使う「ビジネスアプリケーションは死んだ」というキーワードが出てくる。もちろん、ビジネスアプリケーションは無くならない。この言葉の真意は、従来のように一枚岩で、ベンダの提供する「ベストプラクティス」だけがハードコードされた巨大なアプリケーションはすでに現在の変化の激しいビジネスにそぐわないということだ。

 つまりGENESISは、SOAによってビジネスロジックが実装された小さな多数のアプリケーションを接続し、BPMによって柔軟なビジネスプロセスの変更を可能とし、Web 2.0によってエンドユーザーがこれらにアクセスすることを可能にするというミッションを持っているわけだ。もちろんこれらを統合するものが前述のFabricということになる。

 こう書くとGENESISはなにも新しいはのではないという印象をうけるかもしれない。実際、同社エグゼクティブもそう語る。Paul Patrick氏は「カンファレンスに来ているユーザーやパートナーからGENESISをいつ使い始められるのか、という質問をよく受けるが、GENESISはすでに皆さんの手元で始まっているものだ。ただ、これまではユーザーがThread (糸巻)からFabric (布地)を織っていた。しかし、GENESISはBEAがあらかじめFabricの状態にして皆さんにお届けするものだ。しかも強固で柔軟という要求を満たしている」と語る。つまり、GENESISと同じようなものはユーザーの手によって作られてきているということだ。とはいえ、企業の中にあるサービスは多種多様、そこでBEAが統合の肩代わりをしようというわけだ。

 Alfred Chuang氏が基調講演で語ったとおり、BEAのミッションは「エンタープライズコンピューティングをシンプルにする」というもの。GENESIS は「いくつかの問題の解決をひとつにつなげた状態で提供する。これによってシンプリファイを図る」(Paul Patrick氏)ことでBEAのミッションを具現化するものとなる。

 特に日本ではIT投資の80%近くが統合やメンテナンスに使われているという問題がある。Paul Patrick氏はGENESISがこのコストを大きく削減し、ユーザーのイノベーションへの投資を助けるものと期待しているという。

 BEAはTuxedo、WebLogic、AquaLogic、PEPと様々なThreadを提供してきた。GENESISはこれをFabricに統合するという意味で「BEAにとってのNext Journey」(Paul Patrick氏)となる。「2年前、SOAがパラダイムシフトとして登場した。しかしこれが既に次の段階に来ている。SOAを技術のための技術にしないためには、SOAだけを考えていてはダメだ」(同氏)。

 さて、ここまではGENESISの「統合」というキーワードを説明した。GENESISにはもう一つ「参加と共有」というキーワードがある。

 「今日のビジネスユーザーは、ビジネスアプリケーションを使いながらアプリケーションを作っているようなもの」とRob Levy氏。つまり、ERPやCRMの情報を元に、ユーザーの手元で計算式を埋め込んだスプレッドシートを作り、ユーザーの頭の中で予測をする。こうした作業はアプリケーションを作っているのと変わらないというわけだ。

 しかし、ここで作られた「アプリケーション」には決定的な欠点がある。それはユーザー間で共有されないということだ。これまでのシステムでこうした情報を共有しようとすると、情報システム部門に頼んでアプリケーションのロジックを変更してもらう必要がある。しかし、これには数カ月という時間がかかり、現実的ではない。

 Web 2.0の世界では「参加と共有」というコンセプトの元に、ユーザーの考えや情報を共有している。GENESISはPEPの技術を持ち込み、このコンセプトをエンタープライズでも実現する。もちろん、エンタープライズに必要なガバナンスやセキュリティを実現、SOAやBPMと連携する形で提供される。「情報をレポジトリに入れて取り出すという点が新しいわけではない。レポジトリに入れる情報をエンドユーザーがWeb 2.0などの技術を使って提供できる点が新しい」(Rob Levy氏)。

 「BEAは、最初はITサイドでSOA、次にビジネスサイドでWeb 2.0と、同じ問題を2つの側面から解決する技術を提供してきた。近い将来、マーケットはこの2つを統合してあたらしい呼び方をするようになるだろう。ひょっとするとそれがEnterprise 2.0なのかもしれない。そうだとすれば、BEAはGENESISでEnterprise 2.0を実現することになる」(Rob Levy氏)。

 BEAはSOAとBPMでシステムとビジネスアナリストを結びつけようとしてきた。この取り組みをWeb 2.0も使うことでエンドユーザーにまで広げ、すべてを統合しようというプロジェクトがGENESISということになる。SOAのさらにその先を見据え、ビジネスアプリケーションのあり方も変えようという野心的なプロジェクトだ。

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