ユーザー企業の利活用実態も変化
当初は軽い処理が中心となるエッジ系として企業の中で活用されていたLinuxも、そうした背景から進化を続けてきた。「特に現行のLinuxカーネル2.6では、スケーラビリティが向上することで、商用ソフトと比較しても全く見劣りのないものになりました。台数を増やして処理能力を向上させるスケールアウトではなく、1台のサーバ内部で処理能力を向上させるスケールアップできる」(同氏)ようにもなっている。
企業ユースの中でも、こうした初期のユーザー企業は、“アーリーアダプター”として、OSSのコストメリットを享受できていた。「OSSを自分たちだけでメンテナンスできる、力のあるチャレンジングなユーザー」(マーケティング本部部長の阿部川久広氏)だからだ。
だが、OSSに対する認識の変化とともに、アーリーアダプターではないユーザー企業もLinux/OSSを利活用し始める。しかし、そうした企業の場合、外部からサポートを受けてLinux/OSSを活用せざるを得ない。
ここでLinux/OSSに対する一つの課題が浮上してくる。確かに、システム構築などのイニシャルコストは安く抑えられるのだが、サポートも含めた総所有コスト(TCO)の視点で見ると、OSSは商用ソフトとあまり変わらないという課題である。現在、多くのユーザー企業がOSSに興味を示しつつも、実際の導入には躊躇してしまうのは、このような課題を認識しているからだ。
だが、OSSに対するユーザー企業の課題はそれだけにはとどまらない。アーリーアダプターの企業、あるいはすでにOSSを活用している企業であっても、実際には「特定少数の人物に、OSS活用のほぼすべてを依存してしまっている」という課題も存在するのだ。その人間が退職してしまえば、あっという間にOSSを導入しているシステムの問題が続出してしまうという事態になりかねないのである。
「仮に、ユーザー企業の中に、ソースコードを読めて、修正パッチを作れるような人間がいたとしても、そうした人間が何年も続けていけるかどうかは疑問ですよね」(営業本部パートナーアライアンスマネージャーの飯田敏樹氏)
