これらと平行して、Microsoftのクロスプラットフォーム対応のブラウザプラグイン技術「Silverlight」が、Novellでは「Moonlight」として提供される予定だ。また、技術開発の場所として、この9〜10月に、米マサチューセッツとニューヨークに共同の研究所も設立されている。
両社それぞれが内容を協調して講演
こうした両社の提携は、日本法人間でも同様に進められており、「昨年2006年から定期的にマイクロソフトと会議を持っている」(阿部川氏)といい、「それほど遠くない将来に、今回の提携によるサーティケーションを購入いただいた顧客に関してお話できると思う」(同氏)という。
両社の提携関係で、日本国内で表に出ているものとしては、6月に開催されたイベント「Linux World」で両社がそれぞれの講演で、内容を協調した形で講演を実施。また、この11月後半に開催されるイベントでも「相互運用性(インターオペラビリティ)などに関したものを両社で講演する予定」(同氏)という。こうした事態は、数年前までは予想もできなかったことだろう。
この両社の提携が示すものは、これまでLinuxを敵視していたMicrosoftが、Linuxの存在を認め、相互運用性を向上させることに方針転換を図ったということになるだろう。その方針転換の第1弾としてMicrosoftはNovellと提携関係を結んだのだ。事実、この10月にMicrosoftは第2弾として、日本の別のLinuxディストリューションベンダーとも提携関係を結んでいる。
もちろん、この相互運用性向上は、ユーザー企業にとって喜ぶべきことだ。これまでのように「WindowsかLinuxか」で悩む必要がないからだ。米国で行われたある調査では、ユーザー企業の80%が「両社の提携関係でLinux導入機会が増えた」としている。相互運用性が向上することに加えて、法的リスクが低減されたこともあるからだ。
先に示した(2)の知的財産の保証というのは、互いの知財を保証し合うことで、互いに訴訟を起こさないことを明らかにしている。つまり、NovellのLinuxを使っていれば、Microsoftから訴えられることがないからだ。
そして、この提携関係は、すでにNovellに利益面での恩恵ももたらしている。NovellのLinux事業は、過去3四半期で243%もの成長を成し遂げ、売り上げは1億ドルに達しているという。これもやはり、WindowsとLinuxの相互運用性向上に期待して、ユーザー企業がNovellのSUSE Linuxを導入しているからだろう。日本のノベルでも、阿部川氏は数字は言えないとしながらも「米国と同じような勢いで日本でもLinux事業は成長している。また相互運用性が向上するという理由から、大口の案件を数件獲得している」と、今回の提携関係が大きくプラスに働いていることを明らかにしている。