Microsoftが1月8日にFast Search & Transferの買収提案を発表してから1カ月半が過ぎた。この買収提案は、Microsoftにとってどのような意味があるのだろうか。MicrosoftでOffice SharePoint Server部門のグループ製品マネージャーを務めるJared Spataro氏が、Fast主催のイベント「FASTforward '08」にて、今回の買収の意義とその裏話を語った。
Spataro氏は、買収提案に至るまでのMicrosoftのエンタープライズサーチ戦略を段階的に説明した。まずMicrosoftは、エンタープライズサーチ市場に存在していたローエンドとハイエンドという2つの市場のどちらにも参入せず、中間的な市場を立ち上げ、インフラのサーチソリューションを提供することにフォーカスしていた。「この市場形成はある程度の成功を収めたが、これは第1段階に過ぎなかった」とSpataro氏は話す。
次にMicrosoftが注目したのはローエンド市場だ。多くの顧客がシンプルで手軽に導入できるサーチプラットフォームを求めていたことから、同社は無償でダウンロードできるエンタープライズサーチ製品「Microsoft Search Server 2008 Express」を発表した。2007年11月のことだ。
これが同社のエンタープライズサーチ戦略の第2段階だが、「これでも満足できなかった。やはり十分な機能を提供し、ユーザーが満足のいくようなやりとりができるためにはギャップがある。そこでハイエンドにも目を向けた」とSpataro氏は説明する。
その際MicrosoftがFastに目を向けた理由はどこにあったのか。Spataro氏は、「エンタープライズサーチにおいて、Fastはわれわれよりずっと進んでいた」と明かす。検索技術でパーソナライズされた情報を自動的に提供する「ゼロタームサーチ」といったビジョンはもちろんのこと、検索で世界を変えようとする情熱的な人々や、そのための技術など、「すべてMicrosoftにとってベストだった」とSpataro氏は話す。
エンタープライズサーチ分野で、ビジョン、人、技術の3つを兼ね備えたFastと、さまざまなインフラ技術と幅広い顧客層を持つMicrosoftが一緒になれば、「よりよい技術をより早く届けることができる」とSpataro氏は述べ、顧客にとってもメリットがあることを説明した。もちろん、FastがMicrosoftの一部になっても「Fast製品は(Windowsだけでなく)他のプラットフォームもサポートし続ける」(Spataro氏)としている。
Spataro氏は、買収提案のプレスリリースが出る前日、FastのCEOであるJohn Markus Lervik氏とメールでやりとりした内容を明かした。Spataro氏がプレスリリースの最終版をLervik氏に送り、チェックしてもらったところ、Lervik氏から次のような返事が返ってきたという。「だいたいOKだけど、リリースのタイトルは、『MicrosoftがFastに買収提案した』ではなく、『MicrosoftがFastに買収してもらうよう提案した。新会社の名前はMicrofast』だね」と。このような大胆な考えをするFastだからこそ、Microsoftの目にとまったのかもしれない。