第2部:イノベーション面の低得点
おそらくBNETの調査でわれわれが発見した最も厄介なCEOの「盲点」はイノベーションをめぐるものだ。CEOと従業員では、優れたアイデアが組織の官僚主義をくぐり抜けて上がってくるかという点に関して大きく意見が違っていた。優れたアイデアが組織の下から上に伝わってCEOまで届くと考えている従業員は3分の1しかいなかったし、ほぼ4分の1は優れたアイデアは決してまたはめったに従業員のパーティションから出て重役室までたどり着かないと考えていた。注目すべきは、CEOの大多数が自分の会社はこの点でうまく機能していると考えていることだ。
アイデアの関所
マネージャーたちはCEOが経営陣から優れたアイデアを探す方法に特に批判的である。
「この結果は単に2つの異なる意見があるというだけではすまない。2種類の評価にこれほどの隔たりがあるという事実は、組織に何か問題があるということを示している」と経営学教授のWilliam Wallick氏は述べる。「CEOはこの問題について自分の直感に頼ってしまわないことが重要だ。コミュニケーションのルートが開いているのかどうかわからなかったらオフィスから外に出て、組織の各階層の従業員と話をして調べる必要がある」(Wallick氏)
ほとんどのCEOは自分が「イノベーション」(現代のビジネス界の合い言葉)に対して開かれた心を持っていると信じたがっている。しかし、経営学教授のBob Sutton氏によると、変化に正面から取り組むために必要な資質について本当に理解している幹部はほとんどいないという。「真のイノベーションが起こるためには、従業員がリスクを取って失敗することが許される必要がある。また従業員が自由に発言できる雰囲気を感じている必要がある」とSutton氏は述べる。「幹部はイノベーションについて多くを語るかもしれないが、同時にリスクを冒した従業員を罰しているのだ」(Sutton氏)
Sutton氏はまた、経営陣が関与しすぎると良くない影響を与える場合があると指摘する。「土に種をまいたら状況を確認するために毎週掘り返したりしない。新しいアプローチを考案しようとしている人を常に監視しているCEOは単にじゃまをしている場合が多い」(Sutton氏)
複数の専門家は、従業員とCEOではイノベーションに関する質問に答えるときに念頭に置いている前提条件がやや食い違っているのかもしれないと指摘する。結局、従業員にとって優れたアイデアを認めてもらうことは単に組織の利益のためだけではない。従業員はそうしたアイデアに対する称賛も欲しいのだ。新しいアイデアに耳を傾けるが、それを生み出した従業員にはめったに報酬を与えない組織は、この項目で疑いなく悪い得点を取ることになる。